今月の学校図書館

こんなことをやっています!

神奈川県横浜市立今宿中学校

2023-06-22 15:47 | by 金澤(主担) |

 今月は、神奈川県横浜市立今宿中学校の学校司書の金子美和さんに学校図書館の取り組みを紹介していただきました。展示の工夫や授業支援・ICTの活用など、昨年度赴任したばかりとは思えないような様々な取り組みを紹介していいただきました。(編集部より)



【横浜市立今宿中学校】

 神奈川県横浜市は分校を含めて、小学校337校・中学校数145校・義務教育学校3校あります。今宿中学校は横浜市西部、旭区のほぼ中央に位置し、丘陵地帯の自然豊かな場所にあります。旭区の歴史を語るときに必ずといっていいほど名前が出てくるのが、鎌倉時代の武将、畠山忠重です。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で注目された武将です。旭区内には、忠重ゆかりの史跡がいろいろ残っています。

 

【学校図書館】

 2階にある図書館は大きな窓がたくさんあり、明るくて開放的な雰囲気です。向かい側には理科室があり、理科の授業があるときは生徒たちが図書館の入口からひょっこり顔を出していきます。蔵書数は約1万3千冊、昼休みに開放しています。

 


 現在の学校司書が配属されたのは昨年度です。生徒たちに図書館に関心を持ってもらえるように、入口の横にあるショーケースのディ

スプレイを

変えることから始めました。ディスプレイを替える毎に中の本を借りたいと言う生徒がいるので視覚的なアピールの効果は出ているようです。


その隣の壁には「ことばの広場コーナー」を設置して百人一首、詩歌・短歌、ことわざ・名言など蔵書から抜粋したものを毎月紹介しています。また、漢字や英単語の本

を使用したクイズを作成して一緒に掲示しています。英語の先生から単語の使い方のアドバイスを受けて作っているクイズなので、生徒のみなさんに覚えてもらいたいです。

読書で身につく力として語彙力・文章力などがありますが、全教科につながる国語力を大切にする学校図書館でありたいという思いで設置しています。休み時間に掲示してある詩歌を読む声が聞こえたり、漢字クイズに苦戦している生徒たちの様子をうかがえる時は嬉しいです。

図書館内には3か所に本の展示コーナーがあり、毎月本を入れ替えています。テーマは単元や季節に合わせたものや図書委員会・学校司書のおすすめ本、公共図書館が選書した中学生向けの図書リストなどを参考にしています。話題の本や自分の好きな作家の本を展示してほしいと生徒からの希望を受けることもよくあります。展示した本は貸出になることが多く生徒が興味を持ってくれたことがわかります。学習に役立つ本と読書の本、どちらも生徒の手に届きやすい選書を心がけています。

 図書委員会の活動は活発に行われ、年間数回の読書イベントは司書教諭の指導のもと学校司書と協働して行います。立案された読書イベントに皆のアイデアを重ねてより良いものを作り上げていきます。

昨年度は「涼しい本イベント」「先生のイチオシ作家の読書イベント」「ハロウィン本の紹介ポップイベント」「3分ブッキング」「読書週間ビンゴ」を行いました。「3分ブッキング」は委員会生徒のおすすめ本を3分間で紹介した音声をお昼の時間に放送しました。明るい声で本を紹介する様子が元気な今宿中学校の図書館をよく表現していました。また委員会発行の図書新聞は市の図書館教育部主催の読書・広報紙コンクールで賞をいただきました。親しみのある図書館づくりを担ってくれる頼もしい存在です。












【授業支援】
 授業支援は依頼のあった図書資料の準備はもちろん、年間指導計画を見て単元に入る少し前に学校司書から先生に図書+シンキングツールの活用提案などをしています。どのように図書を使用するのか、成果物は作成するのか、着地点はどこか、そのための学びが生徒主体になるように学校図書館として出来ることを先生とお話をするようにしています。

図書の準備依頼を受けるとまず教科書の学習指導要領を読みます。先生の指導計画をもとに指導事項配列表を見て、図書と思考ツールを活用する学習活動内容はいつの時間が良いか考えて作ります。生徒が記入した思考ツールには頭の中にあったいくつもの考えが書き出されていて深い学びになっていると実感できます。

このような授業支援をするようになったのは学校司書の前任校での経験にあります。前任校では学校図書館での情報活用能力育成を実践していました。学校図書館に続く壁には実践例が書かれた思考ツールが何枚も貼られ、図書館内には常に1クラス分の枚数の各思考ツールを常備していました。先生に思考ツールの使い方を学びながら、授業支援での提案や読書イベントに思考ツールを取り入れたりしました。学びの過程でロイロノートの認定ティーチャーになり、色々な思考ツールを使うようになりました。思考ツールは学校図書館での活動にとても適していて、本の紹介POP・本の帯づくり・ブックトーク・調べ学習などに活用できます。これからも続けていきたい授業支援です。

 

【ICT活用】

 ICT活用は学校図書館でも活躍する機会が増えています。今年度はGoogleスライドで学校図書館オリエンテーションを行いました。学校図書館のクラスルームに参加するところからはじまり、オリエンテーションの意義や図書館のルール、日本十進分類法の説明、蔵書検索システムの使い方、グループに分かれて行う本を探しなど盛りだくさんです。本探しは、お題カードに書かれたヒントをもとに何類の本なのか予測して、制限時間1分間で探しました。新しいクラスの友だちと親睦を深めてもらう意味合いを込めて行った効果は抜群でした。生徒たちのパソコン操作はスムーズでさすがという感じであっという間に時間が過ぎてしまいました。最後はGoogleフォームのアンケートに回答して終了し、アンケートの集計結果は担任の先生方に共有しました。

またGoogleクラスルームは学校図書館の情報発信として欠かせないものになりました。本の展示や新着本のお知らせを投稿したり、いつでも見られるように著作権や参考文献の資料を入れてあります。

最近では朝読書の時間や授業のすきま時間に活用してもらおうと、本について考えたり話したりする「読まない読書」をGoogleスライドで作成しました。内容は、「蔵書検索システムで自分の名前の頭文字から始まるキーワードで検索した本の中から気になった本を見つけて、どんな本だったか紹介してみよう。」「チャートで自分の好きな本のジャンルを探して、ジャンルごとにグループに分かれて、最近読んだ本やおすすめの本の話しをしよう。」など数種類あります。

本校には週3回の朝読書の時間があります。全員が読書に集中するのが難しい時もあります。そのような時に読書はしないけれど、本に関わる事はできないだろうか?と司書教諭と話をしていた時に「読まない読書」の企画を思いついたのです。試しにやってみた委員会生徒が夢中になっている姿をみると生徒と学校図書館をつなぐ新しいきっかけになってくれそうで今後が楽しみです。

 

 学校図書館でのICT活用が増えて情報を扱う力がますます重要になっていく中、紙とデジタルの情報を扱う学校図書館の役割は大きいと感じています。学校図書館の姿も多様化していますが、人と本をつなぐ場所であること、今宿中学校ならではの学校図書館でありたいと思います。

(学校司書 金子美和)


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