今月の学校図書館

こんなことをやっています!

東京学芸大学附属国際中等教育学校

2023-10-02 14:13 | by 渡辺(主担) |

 東京学芸大学附属国際中等教育学校は、生徒数約730名の中高一貫校です。
 総合メディアセンターは中学と高校の校舎の間にあるセンター棟の1階に位置し、いずれの学年からもアクセスしやすい環境です。ゆるやかな半円を描いたガラス張りの窓からは、春には新緑の木々が見え、秋には紅葉が美しく、
つい仕事の手が止まります。「ここからの眺めって、まるで軽井沢のようよね。」と生徒に話すと、「司書さん、練馬にいて軽井沢だなんて、安上がりでいいね!」と笑われました。
 しかし窓から広がる四季折々の眺めは、館内で過ごす生徒たちにも心地よさをもたらしてくれているように思います。

 

 ところで、メディアセンターでは文系・理系を問わず、さまざまな教科の授業がおこなわれますが、最近は授業だけではなく、教員から「生徒の成果物を展示してほしい」という依頼が増えてきました。今回はこうした授業後の成果物展示のようすをご紹介します。

<授業の成果物の展示>
高2英語 「英語で絵本をつくろう!」

 ここ数年、高2の英語の授業では絵本をつくっています。まず制作にあたり、生徒たちは館内にある「絵本」を研究しにきます。「絵を描くことが苦手なのに・・・」という生徒には、「絵を描けなくても、切り紙の絵本、落ち葉をつかった絵本もあるんですよ!」とコラージュ絵本なども紹介しました。
 しかし館内の絵本コーナーを眺めはじめると、たちまち生徒たちの会話は絵本の思い出話にうつっていきました。「あっ、『三びきのやぎのがらがらどん』懐かしい!でも今読むと、トロルが気の毒じゃない?橋の下に住んでただけで、やぎにこっぱみじんにされるなんて・・・」と、以前とは違う印象を受けたようです。さらに斎藤隆介の『花さき山』を見つけた生徒は「うわ~、これはホラーだぞ!」と子どもの頃に受けた恐怖心が蘇ったようでした。思い出の絵本は瞬時に当時の感情を呼び覚まし、まるで旧友と再会したかのように話しが尽きませんでした。

 その後数時間をかけて絵本を制作し、授業の最後には館内で一人ずつ自分の絵本を読む時間が設けられました。

 

 

 

 生徒たちが制作した絵本は、教員の評価が終わると館内に展示をします。休み時間に来館した他学年の生徒たちは、先輩の手作り絵本に興味深々。ある中学生は「高校生になったら英語でこういう授業するの?楽しみ~!」と話していました。 

 このように館内で授業の成果物を展示することは、他学年にもいい刺激をもたらします。

 
















そして理科の授業では・・・

中1理科「学校の植物を探ろう!」
 毎年4月、入学したばかりの1年生校庭の植物をテーマに探求をおこないます。グループで問いをたてることからはじまり、メディアセンターの資料も活用しながら外と中とを行ったりきたり。

 今年は理科の先生から「探究したレポートを『らんまん図鑑』としてクラスごとに製本するので、館内で展示している牧野富太郎博士の植物本コーナーのそばにおいてほしい。」と依頼がありました。「探究をした成果がメディアセンターで他学年の目に触れることで、1年生にはやりがいにもなるでしょう。」とのことでした。生徒たちはグループごとに、

 「問い」をたてる
⇒「仮説」を考える
⇒「実験・検証方法」を考える
⇒ 実験する
⇒ 実験結果を考察する
⇒ 結論を導き出す
⇒ 共有とふりかえり
という流れで探究をおこない、完成した冊子もこの流れできちんとまとめていました。こうした成果物を館内に展示することで、司書としてもどのような探求のキーワードが多く、どういう資料が必要だったのか、また参考文献の記載はどうしているかなどを把握することができ、次年度への支援につなげることができます。


中3国語「フェイクニュースと広告」

 国語ではフェイクニュースをキーワードに、インターネットと本から最低でも1つずつ情報を使い、リサーチクエスチョンをたてて、ポスターをつくるという課題がでました。“必ず本も使わないとならない”、となるとさすがにメディアセンターには大勢の生徒がやってきます。

公共図書館からも関連資料を団体貸出で借り受け、カウンタ―の前に

「情報リテラシーの視点から」

「フェイクの見分け方の視点から」

「だまされる心理の視点から」

「広告のしくみ」

「世界のフェイクニュース事例から」というように、いくつかの視点に分類して関連書籍を並べました。完成したポスターは2週間ごとに張り替えて、全員のポスターを掲示しました。


▲フェイクニュースの館内掲示ポスター

 
 高2美術選択「新聞紙での張子の被り物」

 「新聞紙の張子」は、毎年楽しみにしている生徒が多い展示の一つです。制作は美術室でおこなわれますが、完成するとメディアセンターにゾロゾロ見せにきてくれます。ゾウ、トラ、タコ・・・などの生物だけではなく、エジプトのツタンカーメンやUFOなど実にさまざま。毎年圧巻の光景がみられます!





 









  ▲ツタンカーメン(左)とアヌビス神(右)


 
美術の先生が館内に飾ってくれた柴犬の張子は、「自由に被って写真を撮っていいですよ!」と許可がでて、休み時間には柴犬になりきる生徒が続出。「柴犬が柴犬の本を読んでいる写真をとってみる!」など、学年をこえた笑いの輪が広がっていました。



 













 





 

 
普段は学年ごとに過ごすことが多い学校生活ですが、メディアセンターでは日常的に中高の6学年が交流できる空間となることを願って、今後も各教科と連携をしながら授業後の成果物の展示はおこなっていきたいと思います。(東京学芸大学附属国際中等教育学校:司書 渡邊 有理子)


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