今月の学校図書館

こんなことをやっています!

沖縄県那覇市立城北中学校

2015-08-17 12:50 | by 村上 |

 6月に東京学芸大学附属小金井小学校で開催された「学校司書講座」に、沖縄から参加された男性司書さんがいらっしゃいました。しかも和服に帽子という粋な姿で!沖縄は、ご存知のように日本に返還されるまでアメリカの統治下にありました。その影響で、沖縄の学校図書館には専任の司書が置かれていたというのは聞いていましたが、その後紆余曲折を経て、沖縄の学校司書も様々な形の配置があるそうです。那覇市は今も正規職として学校司書が配置されている稀なケースとも。そこで、今月は那覇市の学校図書館について紹介いただきました。



那覇の研修会と平和月間:那覇市立城北中学校図書館

 

 

 わたくしは、沖縄は那覇市で学校司書をやっている、野里と申します。那覇市の本務職員で、学校図書館に勤務しています。

 

 そしてここ、那覇市立城北中学校は、首里城の(わりと離れた)北側に位置する学校です。在籍数は450名ほどで、図書館は10年以上前に電算化されています(那覇市には小中学校が53校ありますが、平成15年までに全校コンピュータ導入済み)。

本校の生徒は、図書館利用に関して抵抗感が少ないようです。これまでの学校と比較しても、よく借りるし本の扱いも丁寧です。年間の目標読書冊数は40冊で、約8割の生徒が達成します(本の内容は不問ってことで)。

図書館の冷房機が稼働している間は満員御礼、止まったとたんに閑古鳥が鳴くという他校でのパターンが当てはまらず、わりといつでも生徒がやってきます。たまに「何で来るの?」と聞きたくなるくらい。


 那覇市では、第4木曜日に研修会をおこなっています。市教育委員会の担当指導主事の指導と助言を受けながら、那覇学校図書館司書研究会が運営しています。また、毎回全員が一所に集まるのではなく、約10校をひとつのブロックとし、ブロックごとに活動することが多いです。

 

 今年度の全体テーマは「レファレンス」です。地域についての調べ学習により対応できるよう、情報交換やレファレンスツールの作成をおこなっています。

 

 また、夏休み期間は、ブロックごとに任意の日にちで集まって、全体テーマとは違った内容に取り組んだりもします。83日には、我が第5ブロックと他地区の学校司書による合同研修会をおこないました。講師を呼んでのブックトーク講習会と、ざっくばらんに情報交換の二本立て。雇用や業務の形態、研修の設定の仕方など、地区が変わるとまるで違うので、ちょっとした日常の話でもお互いにとって刺激になります。

 那覇学校図書館司書研究会の役員的なところに名を連ねるわたくしですが、沖縄県中学校司書研究会の那覇支部運営委員の席にも座っています。

 

 沖縄県ではほぼすべての小中学校に司書が配置されています。そんな司書たちが一堂に会する機会として、年に一度の研究大会があります。「学校司書の資質向上と学校図書館の発展をめざそう」をテーマに、毎年7月末におこなわれています。

 

 34回目となる今年は、724日に本部町(美ら海水族館がありますな)で開催しました。例年は講演会と支部発表という構成なのですが、今回は講演会と分科会方式を採用しました。午前中に「ブックトーク」「うちなーぐち(沖縄方言)読み聞かせ」「学校図書館と著作権法」「日本十進分類法」「オリエンテーション(小学校)」「オリエンテーション(中学校)」の6分科会をおこない、午後に「豊かな学びを創り出すために学校司書ができること」をテーマにした講演会をおこないました。大学の先生、退職された学校司書、現役の学校司書と、様々な人が講師として力を貸してくれました。

 

 わたくし、全体の司会進行をしつつ、分科会「分類法」の講師もしましたよ。

 

 離島からも参加のある、全県的な研究大会が開催されることは、他ではあまりないと思います。年々運営も厳しくなってきていますが、この研究の場は大切にしたいなと思っています。

 

 

 さて、本土においてさきの戦争に関する話題は8月が中心だと思います。

沖縄にとって、それは6月です。毎年6月、沖縄の学校図書館は独特の空気に染まります。沖縄戦の組織的な戦闘が終結したとされる623日を「慰霊の日」とし、沖縄独自の休日となっています。この日を中心に、県内各地で沖縄戦を風化させまいと様々な取り組みがおこなわれています。



 学校においても何らかの取り組みがなされるのですが、本校では道徳主任が中心となり、平和集会で戦争体験者の話を聴いたり、クラスごとに平和学習に取り組みました。
その平和学習の一端として、学校図書館において写真パネルや資料の展示をおこないました。図書委員と一緒に、話し合いながらセッティング。

 沖縄戦に関しては、絵本から専門書まで毎年新しいものが出ます。それらを紹介しつつ、あの戦争から現在の世界で起こっている争いにまで視野が広がるようにしたいのですが、なかなか難しくいつも悩みます。今回はアウシュヴィッツ収容所についても触れました。パネルは米軍の記録写真ですが、有名な「白旗の少女」や艦砲射撃、収容所の様子などがあります。


 どの学校でも同じような取り組みを毎年していますので、生徒にとってはこれまで何度も見てきた(見せられてきた)ものです。惰性だマンネリだと言われたりもしますが、成長とともに見方/考え方は変わりますからね、負けずに展示し続けています。

 わたくしも義務教育時代から見てきたパネルですが、兵士でない者が戦闘に巻き込まれ、焼け野原どころか地形すらも変わってしまった島の様子を見るたびに、やっぱりいろいろ考えてしまいます。

 


 

おまけ。

 515日は沖縄の本土復帰の日です。そこで、社会科の先生とのコラボ展示。

 このへんの取り組みは慰霊の日ほどではありませんが、本土のほかの地域とはちょっと違ったネタだと思いまして。


(文責 那覇市立城北中学校司書 野里純氏)

次の記事 前の記事