今月の学校図書館

こんなことをやっています!

文部科学省事業報告会‐みんなで使おう学校図書館!Vol.7-

2016-01-19 23:07 | by 小野寺(主担) |

  
 平成271219日(土)13時~17時、東京学芸大学W110教室にて、「平成27年度 文部科学省事業報告会~みんなで使おう 学校図書館! Vol.7~」が開催されました。

 参加者は126名。関東近県のほか、愛知、島根、兵庫など遠方からの参加もありました。外は冷たい風がやや強めに吹く寒い日でしたが、会場は熱気にあふれ盛況となりました。



 「今月の学校図書館」では、当日の様子をご紹介いたします。

1.はじめのことば
2.研究報告
(1)今年度の研究の取組について

 
 藤井健志本学副学長・附属図書館長による挨拶で開会。続いて、山崎幸一附属学校運営参事・学校図書館運営専門委員会委員長より、今年度の研究概要の説明がありました。




 



(2)実践報告 ~学校図書館を活用した授業実践~ 附属学校の公開授業者による座談会

 2015
6月から10月に、附属学校4校で、学校図書館を活用した授業実践を行いました。授業者の渡邉裕教諭(附属世田谷中学校)、居城勝彦教諭(附属世田谷小学校)、橋都由美子教諭(附属特別支援学校)、工藤裕子教諭(附属国際中等教育学校)が、それぞれの実践を報告した後、学校図書館を授業で活用することの意義や課題について座談会形式で意見が交わされました。


 附属世田谷中学校3国語「批評を考える」では、修学旅行の経験を踏まえて、『万葉集』から一首を選んで批評文を書くという活動で、万葉集に関する資料の収集、展示と班への配布、そもそも〈批評〉とは何かを調べ、批評を書くための情報収集とその精査を行いました。一連の授業を、教室と図書館で行ったことにより、空間だけでなく授業時間も超えた学習活動となり、教員の意図を共有した司書と協働することで、豊かな活動が成り立ちました。(渡邉)

 附属世田谷小学校3総合学習「おさかなミュージアムをつくろう」では、八景島パラダイス(横浜)への遠足をきっかけに行われた一連の活動です。遠足の事前調べ、事後の発表会、図工では海の中を表現した作品づくり、国語では海の生きものをテーマに俳句を詠み、その図工作品、俳句はいずれも学校図書館内に展示しました。公開授業では、海の生きものが出てくる本を見つけて、紹介文を書いて友達にすすめる活動の一部を参観していただきました。これらの活動は、日常的に使ってきた学校図書館の働きを広げ、新たな発見のある営みとなりました。(居城)

 附属特別支援学校中学部総合学習「東京探検」では、東京スカイツリーを中心に「のりもの・たてもの」の資料を、附属学校のネットワークを利用して集めて展示しました。公共図書館でも本を借り、子どもたちはそれらの本で下調べをしてから社会科見学に出かけました。教員と司書で調べ方のクイズも作り、調べる活動の導入として行いました。司書がいることで教員の一方通行でなく子どもにポイントを伝えることができ、その子に合った資料を探すこともできました。司書は子どもたちからの信頼も厚く、重要な存在です。(橋都)

 附属国際中等教育学校4年(高1)国語総合「「本」という存在」では、図書館に本の貸出猶予を希望する作家の意見をきっかけとして、様々な観点から「本」についての文章を読み、話し合ってきました。最後に、装丁という「本の姿」に着目して本を味わいました。司書のブックトークを聞き、本を装丁という視点からもとらえることを学び、新たな目で館内の書架を巡り、自分が心を打たれた本を見つけ出し、紹介し合いました。この学年の生徒は本があまり好きではないようでしたが、授業後には貸出数が伸びるという結果につながりました。(工藤)


 教科を超えた空間としての学校図書館の活用、日常的に使っていればこそのさらなる図書館活用、さらに司書がいればこそという点についても、教員、司書ともに言及されました。


 公開授業の様子は、2015年11月の「今月の学校図書館」でもご覧いいただけます。

(3)学校司書の研修のありかたを考える
  ●司書部会より報告
 
 学校司書の研修のありかたに関する今年度の3つの取り組みについて、附属学校司書部会から報告がありました。

 1つ目の取り組みは、ブックリスト「学校司書のための研修に役立つ本 ―入門編」の作成と公開。2013年度に実施した学校司書の日常業務の記録と分析をもとに試作しました。(「資料アラカルト」からダウンロードできます。)

 2つ目は、中堅学校司書のための研修プログラムの企画、実施、検証。教育法、探究型学習、合理的配慮、著作権、ICT活用、情報検索について、それぞれ専門の先生をお招きし、2日間の研修会を行いました。

 3つ目は、学校司書が配置されている20の自治体に研修に関するアンケートの実施。「学校司書全体のスキルアップが研修によって保障されていると思うか?」という主旨のアンケートの結果からは、学校図書館支援センターの有無が研修の機会の保障と大きく関わっていることが見えてきました。


 この報告のパワーポイントは、トップページの「お知らせ」からご覧いただけます。

  ●指導・助言
 司書部会による報告の後、市川市教育センターの富永香羊子氏と前田稔本学准教授よりご指導、ご助言をいただきました。

 富永氏からは、どの学校にも格差のない学校図書館サービスを目的として、学校図書館の支援の核となっている「市川市教育センター」の役割や取り組みの紹介を中心にお話しいただきました。
 ご指導、ご助言からは、各自治体には教育センターが中心となって、学校司書の研修の機会を支援する責任の重要性を強く感じ、司書部会で実施したアンケート結果を証明してくれる内容でした。

 
 前田准教授からは、東京学芸大学における学びの多様性についてお話がありました。

 本学では毎年、司書教諭講習、公開講座「学校司書入門講座」「学校司書応用講座」、学校図書館げんきフォーラム(デジ読評価プロジェクト)が行われています。その他にも、学部生対象の「学校図書館サービス特論」という授業では、附属学校司書にもゲストティーチャーとして参加してもらい、学生に教員養成の過程で学校図書館教育について学んでもらっています。なぜ学校図書館が重要であるか、学校図書館を活性化するためには、授業で学校図書館を使える教員を養成するだけなく、学校司書がスキルアップするために研修が必要ということでした。

3.トークセッション「学びを支える学校図書館と学校司書とは」


 報告会後半は、「学びを支える学校図書館と学校司書とは」と題して、本事業委員である鎌田和宏氏(帝京大学教育学部教授)、野口武悟氏(専修大学文学部教授)、長谷川優子氏(埼玉県立図書館司書主幹)とコーディネーター成田喜一郎本学教授によるトークセッションが行われました。

 鎌田氏、野口氏からは「教育法」や「合理的配慮」について、長谷川氏は県立高校やがんセンターで司書をしていたときの経験談を、成田教授からは「国際バカロレア」や「アクティブラーニング」といった最新の教育動向についてそれぞれお話しいただきました。その後、参加者全員がそれぞれ「報告会に参加して生まれた自分の問い」を一つずつ考え、近くに座っている3名ごとに話し合いを行いました。短い時間でしたが、アクティブラーニングを体験すると共に、この報告会で聞いた盛りだくさんの内容を自分の中で整理し、今日抱いた問題として言語化することで実りある時間を過ごせたと、参加者にも好評でした。



4.終わりのことば
 
 おわりに、山崎運営参事・学校図書館運営専門委員会委員長よりあいさつがあり、閉会となりました。

 参加者からは、「学校図書館が学校教育の中で生き残っていくには、広く発信していくことが大事ですね。」「学校図書館を授業で使える教員を養成していってください。」という感想や要望のお声を多数いただき、これからの研究や活動に活かしていきたいと思います。


文責:学校図書館運営専門委員会 司書部会



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