今月の学校図書館

こんなことをやっています!

長崎県立佐世保工業高等学校

2016-03-05 10:46 | by 中山(主担) |

長崎県立佐世保工業高等学校 福田顕

 長崎県立佐世保工業高等学校は、昭和12年開校の県下で最も歴史のある工業高校です。機械科・電子機械科・電気科・電子工学科・建築科・土木科・材料技術科の7学科から成り、『自律・創造』の校訓のもと、授業や実習を通し、技術者として必要な知識や技能を身に付けています。

 工業高校ということで男子生徒が多くいますが、女子生徒も学年に10名ほど在籍しています。本校の図書館は1号館3階にあり、2号館の教室棟とは渡り廊下で繋がっています。各学科で読まれる専門書や資格取得の本などが充実しているところに、工業高校らしさを感じます。

 

 私は、長崎県立佐世保工業高等学校に勤務している、福田と申します。建築科の職員ですが、図書にも携わっています。
 昼休みに図書館へ行くと、図書の先生がセレクトされた軽やかな音楽が私たちを出迎えてくれます。生徒達はソファーでくつろぎながら本を読み、本の情報交換をしています。佐工の図書館は、図書の先生の『こういう空間で生徒に本を読んでほしい』という思いが反映された、居心地の良い空間です。


 その居心地の良い図書館に、なぜブックスタンドを作ろうと思うようになったのか。

 それは初めて図書館を訪れた時に感じたある疑問でした。図書館には色とりどりのポップが窓に貼ってありました。1学年の生徒が国語の授業を通して作ったものです。生徒が一生懸命本を紹介したポップなのですが、私は窓を見て疑問を感じていました。
 どう疑問を感じたのか?それは、ポップが貼ってあるために窓が開けられないのではないか?窓からの採光と通風が十分に確保できていないのではないか?という建築的なものでした。
(図書館は本の品質を保つために、完全な空調管理が理想的ですが、本校ではそれができないために窓からの通風が必要となります。)
 それだけではありません。ポップは両面テープで窓に貼ってあり、その両面テープが透けて見えていました。些細なことですが、『(見た目が)もったいない』と感じました。図書の先生も窓にポップを貼るため、結露や色褪せなどの点で苦労されていました。
 そこで

生徒が作ったポップを活かし、『これまでとは違う形で本の紹介をしよう!』と思ったのがブックスタンドづくりの始まりです。 

 佐工には建築デザイン部という部活動があります。その生徒と共にブックスタンドづくりを始めました。

コンセプトは以下の2つです。

①材料費がかからないもの

②本を立てるための強度と繰り返し利用できる耐久性のあるもの

③簡単で誰もが作れるもの

 ①②の条件を満たす素材ということで、ダンボールを使うことに決めました。
ダンボールはコピー用紙などの梱包でたくさん集まるので材料費がかかりません。
また強度的にも優れており、重ねて使うことで遊具やダンボールハウスなどにも応用されています。

もし不要になったとしても可燃物として簡単に処分できるので、ブックスタンドを作る材料として最適です。
また、ブックスタンドが風にあおられて倒れないように、建築科の実習で作ったコンクリートの供試体を重石にしています。実習で出た廃棄物を有効に使うことも大切です。
 ③のだれでも簡単に作れるデザインにたどり着くまでに少し時間はかかりましたが、試行錯誤を重ねてデザインが完成しました。


 なるべく多くのブックスタンドを作り、たくさんの本を紹介して

ほしいという図書の先生の思いもあって、建築デザイン部と図書ボランティア

の生徒でブックスタンドの複製に励んでいます。
ブックスタンドの表面に折り紙などで各々が飾り付けを行っています。
 まだいくつかの改善点があり、今後少しずつ変化していきます。(佐工には建築科もありますので、木製のブックスタンドも作りたいと考えています。)

 佐世保工業高等学校はものづくりが盛んな学校です。創作したいものを自分たちの手で作れるように授業や実習を通して学びます。生徒が作ったもので図書館が彩られ、ますます親しみある空間になっていけばと考えています。


 長崎県立佐世保工業高等学校教諭

 


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