今月の学校図書館

こんなことをやっています!

愛知淑徳中学・高等学校

2017-12-08 20:35 | by 井谷(主担) |

 

図書委員とつくる読書週間

10月に愛知で行われた日本教育大学協会研究集会に出席した折に、愛知淑徳中学校高等学校を見学させていただきました。広々とした館内に9万冊を超すという素晴らしい蔵書にも圧倒されましたが、図書部長の神尾環樹教諭と、司書教諭の伊藤なつみ教諭にお聞きした図書委員会の活動が大変興味深かったので、今回、伊藤先生にご紹介いただきました。

 


1、概要
 愛知淑徳中学校高等学校は、1905年に愛知県下最初の高等女学校として創立、2006年からは高校入試を行わない完全中高一貫校になりました。生徒数は約1,700名です。

 図書館の蔵書は9万冊超で、校舎を5階まで上がり、別館に移動してさらに登った、いちばん高い見晴らしのいい場所に位置しています。学校司書1名、専任司書教諭1名、図書部教員7名で運営されていて学校司書と司書教諭は任期付職員です。

 本校の図書館を読書週間の活動と共にご紹介したいと思います

2、生徒主体の読書週間

 本校では読書週間を11月3日・文化の日前後に3週間程度設けて、図書館利用推進に向けた取り組みをしています。具体的には2年に1度の図書部主催の講演会、コンクール、図書委員主導の展示やイベントを行っています。 

○読書週間コンクール

 読書週間コンクールは生徒作品を募集し、掲示・投票を経て全校で表彰を行うコンクールです。創作意欲が旺盛な生徒が多く、毎年たくさんの作品が出展されます。


○展示

 図書委員のアンケートから『刀剣乱舞で紐解く日本の歴史』
『和製ファンタジーと海外のfantasy』など4つの班にわかれて展示を作成しました。
 いつもと違う生徒目線での展示はとても好評でした。
 また自分たちで決めたテーマで展示することができたので、普段あまり積極的でない図書委員も生き生きと活動していたのが印象的でした。
    














○イベント

 図書委員も来てくれた人も、みんなが楽しめるイベントにしよう!ということで「出張図書館」「本の交換会」「TRPG」3つのイベントを、実施しました

 「出張図書館」はターゲットを絞り込めず、今ひとつ客足が伸びませんでした。しかし校内のあらゆるところで本に、図書館に、繋がれるというのは良かったのではないかと思います。反省点を次につなげていきたいね、と生徒と話しています。

 


「本の交換会」は約200冊の本が集まり、初日で150冊近い本が交換されていきました。実行委員である図書委員自身が交換に積極的になりすぎてしまい、最終的な交換は図書館主導の方がよかったです。また、欲しい本がなかった人はどうするのか、あまった本の処理についてなど生徒たちだけでは考えが及ばない部分もあったので、図書委員でもう少ししっかりと考えさせる時間が必要だったと思います。

 





「TRPG」はテーブルトーク・ロールプレイングゲームの略で、紙や鉛筆、サイコロなどの道具を用いて、会話とルールブックのルールに従って物語をつくっていくロールプレイングゲームです。海外の図書館では、ゲームを行う例がたくさんあるようですが、自分自身が経験したことのないイベントだったので、定期的にTRPGイベントを開催している公共図書館の方のお力を借り、大学のサークルに見学させてもらったりしながら生徒と準備をすすめました。図書館には直接の関連がないようにも思えますが、ルールやキャラクターを考える際に図書館ほど資料に恵まれた場所はありません。また話し合いながら一つのストーリーを作り上げていくというのは創作活動に近いものがあると考えます。シナリオの舞台(ゲームを主導する人が自由に作ることができる)を図書館に設定したり、TRPGが原作になっている海外のファンタジーを紹介するなどの工夫も行いました。

 ふだん図書館に来ない生徒に来てもらうのに一番効果的だったイベントは「TRPG」です。40名近い生徒が参加しましたが、1/3程度が普段は「図書館にはあまり来ない」とのことでした。

 生徒の生活動線から外れている本校図書館ですが、図書委員が自ら考え、運営していくことで今以上に活発に利用されていく図書館になるのではないかと思います。


3、そのほかの図書委員の活動

 愛知県の私学には、私学合同読書会があります。名古屋市を中心に私立高校の図書部員・図書委員が参加し、前期にビブリオバトルを、後期に読書会を行っています。約40年の歴史をもつ活動で、生徒が主体となって運営されます。開催時に様々な情報交換ができ、とても興味深いものです。ビブリオバトルで優勝した本が読書会のテキストになる仕組みで、今年度は『哲学的な何か、あと科学とか』(飲茶 二見書房2017)でした。


4、おわりに

 本校は本を読む生徒が多い学校です。でもまだ自分の好きなもの、自分の周りの人が好きなもの、の幅にとどまっているように思います。蔵書構成や廃棄の問題など課題が多くありますが、生徒の知的好奇心を刺激する図書館をめざして、図書委員とともに魅力的な図書館をつくっていきたいと思います。
           (愛知淑徳中学・高等学校  司書教諭  伊藤 なつみ)


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