今月の学校図書館

こんなことをやっています!

兵庫県 神戸市立歌敷山中学校の巻

2018-05-01 08:48 | by 村上 |

    神戸市は平成26年度に学校司書の配置事業が始まり、歌敷山中学校はその第一号の配置校として、学校全体で学校図書館の活用に取り組んでいます。学校司書の菅野さんは、昨年の文科省事業報告会に参加されて私たちの取組に共感し、実践事例を提供いただけたご縁で、今回この記事を執筆してくださいました。




、概要
 神戸市立歌敷山中学校は、神戸市の西部・垂水区にあり、平成29年度に創立70周年を迎えました。生徒数740人、クラス数20クラス(特別支援クラスを含む)の大規模校です。

 「波 静かなる 瀬戸の海」と校歌の歌詞にあるように、校舎の窓からは、対岸の淡路島と明石海峡大橋の下を行き交う船を眺めることができます。敷地内の42本の桜の花が満開になると、春の陽光にきらめく青い海と桜の花のコントラストに、吸い込まれてしまいそうな景色が広がります。このように恵まれた環境の中、生徒は学業に、部活動に日々励んでいます。(写真右上は、本校3号館からの眺め)

  図書館は、職員室などがある1号館の2階で、本校で最も古い建物の中にあります。記録によれば、昭和32年に完成とあり、また図書館内の書架の3分の1は昭和28年に納入されたものです。残りの3分の1は、学校司書が配置になって新しい書架になりましたが、古いものと新しいものが混在している状況です。隣は音楽教室、階上は講堂兼体育館のため、時間によっては、とても賑やかなことがあります。


 本校では、学年ごとの号館に生徒の教室があるため、図書館へは、階段を降り、渡り廊下を通って、また階段を登らなければなりません。そのため、業間の休み時間は、特別教室への移動等があり、開館をしていません。昼休みと放課後のみという限られた開館ですが、友だちと談笑しながら借りる本を探したり、目当ての本めがけて来館し、夢中になって読んだりしています。最近では、調べ物をするために来館する生徒も見受けられるようになりました。(写真左は、図書館入口の新着本コーナー)


2、授業支援の“ネタ”は職員室にあり
 神戸市の学校司書配置事業は、平成26年度から始まり、当初は小学校20校、中学校10校の配置でした。本校は、垂水区内の中学校第1号の配置校として現在に至っています。(平成30年度は、小中学校119校、義務教育学校1校に配置)

 10月に着任し、はじめて図書館に足を踏み入れた時、暗いなぁという印象でした。北側の部屋ということもありましたが、窓には緑色の暗幕が掛かり、梁にはいつの時代ともわからない賞状が掛けられていて、掃除をして本の廃棄というよりも、図書館全体の環境整備を進めていく必要がありました。また、職員室の階上という場所のためか、会議の部屋として、あるいはブラスバンド部の練習場所として使われ、本来の学校図書館としての機能はないに等しい部屋でした。

 まずは、教職員全体に学校図書館の存在を認識してもらう必要がありました。司書教諭や図書館担当の教員とともに、放課後開館が毎日できるように働きかけを行うことからはじめ、掃除や本の廃棄も進めていきました。また、学校司書という存在を通して図書館を認識してもらうよう、職員会議で、図書館からの情報提供を心がけました。

 当初は授業支援など夢のまた夢の世界のことだと思っていましたが、このレポートを書くにあたり、「学校図書館活用の記録」で振り返ってみると、29年度には年間を通じ、授業のなかで本が紹介され、情報活用能力を念頭に、調べ学習を担当教員とともに実施することができました。手前味噌かもしれませんが、現在の図書館で精一杯の教育活動への貢献ができたのではないかと思います。今にして思えば、PCの環境等で、職員室で選書や掲示物作成を行わなければならなかったことが、実は授業支援の機会をつくり、図書館活性化への道をひらいたのではないかと感じています。(写真右上は、これが6度目となる1年生の調べ学習)

 職員室というところは、学校の重要な情報が流れると同時に、教員の教材研究の大事な場所です。職員室にいて、本が役立ちそうだ!という情報をキャッチしたら、担当教員とコミュニケーションをとり、何を必要としているのかくみ取るようにし、情報提供をしました。また、教育活動についてわからないことは尋ね、生徒が見せる様々な姿についての話も時間の許す範囲で耳を傾けました。このような日々の積み重ねが学校司書としての成長を促してくれたのではないかと思います。(↑参考図書コーナー)


3、生きて働く学校図書館をめざして
 実際に授業支援をしていくためには、学校図書館を構成する本がなければお話になりません。整備に時間が必要だということはわかっていましたが、目立つ掲示板に図書館のコーナーをもらって、広報活動に努めるなど、できることから積極的に取組みました。
 廃棄をし、新しい本を入れながらでしたが、少しずつ、少しずつ本は動いていきました。27年度に司書教諭と調べ学習をしましたが、本が足らなくて公共図書館で借りてきたり、コピーをしたりしてしのぎました。

 28年度になって、管理職をはじめ、教務部長、学習進路部長、学年総務、司書教諭、図書館担当教員と学校司書を構成メンバーとする「図書館教育推進委員会」が設置されました。司書教諭と学校司書、あるいは各教科の教員と学校司書という、言わば点の状態で図書館教育を進めていくのではなく、学校全体で協議して進めていってもらうために、前年度より提案をしていたものです。ただ、すべてが手探り状態の中で、どのように進めていけばいいのか、会議の空気はとても重たいものでした。

 そんな中、助け舟を出してくれたのは2年生の学年総務(当時)でした。「本当にやろうと思ったらな、図書館に入って教科別に座って何ができるか話し合ったらいいねん。でも、やる、やらないは別。」というこの一言で図書館での職員研修の実施が決まりました。

 研修の時間は30分足らずだったと記憶しています。はじめに、学校図書館の機能についてと、ねらいの達成に効果的な単元を選んでほしいという話しをしました。その後、教科ごとに話し合い、出来上がったのが写真にある「学校図書館を活用した教科指導の内容について」です。[何ができるか]にあわせて[こんな本もあったら]というリクエストを聞いて選書し、年度末に再び、職員研修で本を見てもらいました。
 29年度も2月末に職員研修を実施しました。本校で実施したアンケート結果とSLAの読書アンケートとを比較して、生徒の読書傾向について報告をしました。その後、この年度に実施した調べ学習について、担当教員から説明した後感想を言ってもらい、全体で共有しました。

 以上が授業支援についての本校の図書館の歩みですが、今後も支援をしながら整備を進めていくことになりそうです。検索用、管理用のPCの設置、非図書資料・情報ファイル資料の整備、学校司書の有期雇用など課題は山積しています。この単元にはこんな本も必要では、と思うことは今でもしばしばあります。
 <29年度職員研修の様子>  













 <図書委員会主催「読書のハートに火をつけよう」>











 

 新年度もアンテナを高くして一歩ずつ進んでいきたいと考えているところです。

(文責 神戸市立歌敷山中学校司書 菅野佳代子さん)



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