司書研修の報告

司書研修の報告

No.9 令和2年度 みんなで学ぼう!学校司書講座 2020 オンライン研修

2020-08-31 10:12 | by 松岡(主担) |

 東京学芸大学の学校図書館運営専門委員会司書部会では毎年夏に研修を行ってきたが、例年と同様に実施することは難しいと考え、今年度は2020年8月1日に初めてオンラインでの研修「みんなで学ぼう!学校司書講座2020オンライン研修」を実施した。

 附属各校は3月から休校となり、再開するまでの間は司書部会も手探りの中オンラインでの会議を行い、
それぞれの学校の様子を共有したり、休校期間中にできることはないかと情報交換をしたりして活動を模索していた。その中で(株)カーリルが無償で提供している学校図書館支援プログラム「COVID-19:学校向け蔵書検索サービス」を知り、各校も順次この支援グラムを受けることでそれぞれの学校図書館に合った形でサービスの提供を行ってきた。

 自校の取り組みでこのサービスから気づいたことやさらに深めて知りたいこと、検索についての現状についてなど司書部会の中でも関心が高まったことを受け、カーリル代表の吉本龍司氏を講師に迎えてオンライン研修を開催する運びとなった。
 オンラインでの開催ということもあり、全国各地から参加申し込みがあり、当日も99名の参加があった。
















 研修は講師の吉本氏と本学附属世田谷中学校司書の村上との対話形式で行われた。吉本氏は「この研修で
どんなOPACをつくるかを参加している全員で話し合い、みんなで考えていきたい」ということを大きなテーマに、カーリルの「COVID-19:学校向け蔵書検索サービス」を開始した経緯をお話しされた。

 また、これからこのサービスを利用したい人に向けて具体的なサービスの提供方法や、実際に検索や予約連携の方法も紹介してくださった。このサービスを利用しているケースとして本学附属の国際中等教育学校のデモ画面を提示しながら、連携することで広がる可能性についてご提示いただいた。国際中等教育学校での利用の様子は司書の渡辺より報告があった。
  ●7月から使い始めて、生徒からは大好評。
 ●教室からスマホで探せる、予約できる。
 ●国際中等は多言語資料をもっているので、言語ごとの検索ができ、検索が難しくても一覧で探せるのがとても便利。
 ●Googleフォームでレファレンスも受け付けることで丁寧なサービスが可能になった。
 ●学校という場にいるので、最初の検索結果は自校のみのほうが使いやすいかもしれない(電子書籍は最後でよい)。
 休校で学校へ行けない、図書館に来館できない、という状況下においてカーリルの蔵書検索サービスは自宅のPCやスマホから検索や予約ができるという使いやすさや、青空文庫の検索と連携することで探している本を電子書籍で読むことができる、という利便性も多くあるサービスだということが分かった。

 吉本氏は「今回をきっかけにカーリルが今までアクセスできなかったオフラインの学校図書館にアクセスできるようになった。逆にアクセスできなかった部分に取り組んでみると一番自由にサービス設計ができることに気づいた。」とお話しされていた。
 既存のサービスと今回の新たな取り組みによってさらなる可能性を見出し、動き出している現状を様々な角度から伺うことができた。
















 また、研修
後半では若者のGoogleでの検索が減ってきているようだという意外なお話も伺った。しかし、アプリ内の検索利用は増えているという。レシピを探すならレシピサイトを、映画ならネットフリックスというようにである

 では本を探すにはどんな検索がよいだろうかということを考えると、図書館の本の検索では、子どもたちにとって達成感がある検索体験が必要なのではないかと吉本氏は考えている。今はスマホの普及により、利用者が見る画面が小さいので一度に俯瞰できるデータの数が減ってしまった。だから検索結果の順番が大切であり、今回の学校図書館支援プロジェクトでは並び順について様々な技術が使われているということだ。技術者向けの専門的な興味深いお話も伺った。 

 研修の中で、学校図書館に最適な検索とはなにかを、聴講してくださった皆さんと一緒に考えてみた。以下チャットに寄せられた意見をピックアップした。
NDCで分類ごとにカテゴリー分けすると使いやすい。
・ブックウォークのように書影がみえる。(新刊、調べ学習時のNDCごとカテゴリー分け)
・図書館内をブラウジングした感じで検索したい。

・ラノベの短縮タイトルでも検索できるとよい。

・子どもたちの考えるキーワードでも検索できる。

・連想検索との連携。
・検索画面を見たときに教科単元とつなげられる。
・件名とキーワードがうまく結びつくとよい。

・子どもたちが当たり前に使える検索がほしい。
など参加者の熱い気持ちと検索に対する希望に満ちた様々な意見がチャットに投稿された。
 

 最後に吉本氏から総括として、図書館がインターネットとつながることで生まれる可能性について伺った。他館とネットワークが結びついて蔵書構成の評価ができ選書や除籍の一助となるほか、共有され豊かになる書誌データによって別名・略名・誤記名などでも本の検索が可能になり、検索努力が報われるようになるとのことである。
 インターネットからアクセスしやすく手の届くところに本があるという環境を図書館側も整える必要性があり、図書館とインターネットの垣根をなくして“当たり前に探せる”ことの積み重ねが重要であると吉本氏は訴えた。


 村上との対談の中で、今後における学校図書館用OPACの構築の可能性が示唆され、それが学芸大学総合目録(GAKUMOPAC)構想へとつながっていくこととなる。 
 様々な立場の人たちにとってアクセシビリティな検索とはどんなものか。コロナ禍のように図書館へ入れなくなったとき、インターネット上でどのように図書に関する情報へアクセスすればいいか。カーリルの支援をきっかけに、それぞれの学校図書館が検索の可能性について考えるきっかけとなった。

 

【参加者からの質問対する回答】 

Q.COVID-19支援策に関して、セキュリティはどうするのか 

A.パスワードをかけているところもあるが、限定公開で対応している学校ある。

  4月に一度パスワードを変えて卒業見られないようにするなど対応できる。 

Q.(要望)予算の確保が難しい県立図書館ではオープンデータ無料サービスなどあるとありがたい 。検索ランキングなどトレンドが見られるといい

Q.カーリルさんはどのように収益をあげているのか 

A.広告収入と図書向けの業務用APIの提供でなんとかやっている。

Q.町内で代表者が各学校のデータをとりまとめて送ったら検索画面はどのようなものになるか 。

A.一つのファイルにしたら一つの図書館になる 。ExcelとCVSで分けると2つの図書館になる。二つのファイルを一つの検索まとめることもできる 。

 

(文責 東京学芸大学附属小金井小学校 司書 松岡みどり
    東京学芸大学附属小金井中学校 司書 杉本ゆかり
    東京学芸大学附属竹早中学校  司書 中村誠子)

 

資料 2020年度学校司書オンライン研修プログラム.pdf

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