今月の学校図書館

こんなことをやっています!

宮城県農業高等学校×名取市図書館 ~科学部と図書館の連携~

2025-01-06 10:23 | by 松岡 |

 今月は宮城県農業高等学校の取り組みを科学部顧問萩尾斗武先生と学校司書龍崎小百合さんよりご紹介いただきました。学校のある名取市の図書館と連携し、始まりは図書委員会から、現在では科学部も地域と学校図書館を繋ぐ役割を担っている様子をご覧ください。(編集部)


1 学校概要
 宮城県農業高等学校は、仙台市から南へ約10㎞、名取市北部にあります。農業科・園芸科・生活科・食品化学科・機械科の5学科、各学年6学級、計18学級からなる、全校生徒約700人の中規模校で、宮城県では2校ある文部科学省指定の農業経営者育成高等学校です。
 入学生は、普通教科に加え、農業・調理・福祉・食品製造・農業機械など各専門分野を学ぶことを深く希望してきます。多様な実習を通じて経験を積み、今年度は農業クラブ全国大会のプロジェクト発表会2部門と意見発表会2部門最優秀賞、うち1部門は3年連続最優秀賞という快挙を遂げています。
 卒業後は、製造業・販売サービス業など様々な産業へ就職します。また、大学・短期大学専門学校へ進学し、中には高校で学んだ農業を深く学ぶために農業大学校へ進学する生徒もいます。
 生徒の進路達成と地域貢献を目指して、生徒と教職員が一丸となって信頼と友情を育て、自然を相手に動植物を愛護し、生命の尊さを学んでいます。

2 名取市図書館との連携
(1) 始まりについて
 令和2年に本校図書館と図書委員が名取市図書館ティーンズコーナー展示の依頼を受けたのが始まりです。初めての試みで、図書委員も試行錯誤しながら「宮農図書委員オススメ図書」コーナーを制作しました。地域の方に見てもらえるよう、入学に興味をもってもらえるよう、毎年楽しみながら図書とPOP展示を行い、今年度で5年目になります。

 令和4年度

  

 

 

 

 令和5年度

 令和6年度

 生徒がもっと地域の方と繋がり、同年代に読書の楽しさを伝えるにはどうすれば良いか、名取市図書館長の加藤孔敬様、図書館司書の古瀨さおり様とお話を進めるうち、名取市図書館の「Let‘s理科読」というイベントの運営補助についてご相談いただきました。内容を伺ったところ、本校科学部にバトンを渡すべきと思い、顧問の萩尾先生と名取市図書館を繋ぐことになりました。

(2)図書館の枠を超え、科学部も連携
 令和5年に名取市図書館より依頼を受け、名取市子ども読書活動推進事業「Let‘s理科読」の運営補助を科学部が行ったのが、名取市図書館と宮城県農業高等学校科学部の連携の始まりです。「Let‘s理科読」は東京のNPO法人ガリレオ工房のご協力で、科学実験と本をコラボレーションさせた内容を小学生に体験してもらうイベントとなっています。令和5年は「空気のちから」をテーマにした、令和6年は「見て聞いてさわろう音」をテーマにした工作や実験、科学絵本の読み聞かせなどを行い、子どもたちに科学の面白さを体験してもらいました。科学部は実験・工作を行う子どもたちのサポートをしました。

 

 

【写真1】

「空気のちから」をテーマにした空気砲(令和5年)

 

 

 

【写真2】

「空気のちから」をテーマにした新聞紙ドーム(令和5年)

 

 

【写真3】

「見て聞いてさわろう音」をテーマにした糸電話

(令和6年)

 

 また、「Let‘s理科読」でのご縁もあり、令和5年以降は、8月半ばから9月中には名取市図書館の3階情報発信コーナーにて「被災した沿岸部での桜の植樹活動」という題材でパネル展示を行っています。
 東日本大震災時には、沿岸部にあった宮城県農業高等学校の旧校舎は津波の被害を受け全壊しました。しかし、津波から奇跡的に生き延びた桜が花を咲かせ、地域を勇気づけました。科学部では、それら復興を象徴する桜を「植物バイオテクノロジー」の授業で学んだ「組織培養」によって増殖させ、被災した沿岸部を中心に植樹を行ってきました。そして、今までの植樹本数は1000本を超えます。本内容をパネル展示することで、科学部の研究活動について伝えるとともに、学校PRにつながっています。また、東日本大震災の伝承に寄与しています。

 

 

【写真4】

「Let's 理科読」開催時のパネル展示

 

 

 

 

 

【写真5】

8月から9月中の3階情報発信コーナーでのパネル展示

 

 

 

 

【写真6】

8月から9月中の3階情報発信コーナーでのパネル展示

 

3 宮農高図書館のこれから
 名取市図書館と本校図書館の連携から、宮農科学部と名取市図書館が繋がり、図書館利活用の幅広さを再確認しています。また、名取市図書館には地域と学校を繋ぐ役割を担っていただきました。今後も連携を続け、読書活動推進と地域への情報発信に努めたいと思います。
その第一歩として、今年度から図書委員が計画・実施した活動を少し紹介します。

(1)  文化祭で地域の方に自作しおり販売
 読書を生徒と地域の方に楽しんでいただくため、可愛いしおり等を作って文化祭の一般公開で販売しました。昼休みや放課後に委員達がコツコツと作り、当日は250個近く販売しました。生徒達の自信にも繋がり、次年度も継続しようと意欲的に計画しています。

 

 

(2)  図書館カフェ
 生徒不読者層に来館してもらえたらと思い、名取市図書館にカフェが併設されていることを参考に本校でも1月に実施することにしました。本校学生寮の給食で人気のデザートを図書委員が制作・提供し、図書館が1日だけの放課後カフェに変身します。現在ポスター等制作中です。

 

4 まとめ
 学校図書館は今後、読書センター、学習センター、情報センターの役割を強化するため、地域との連携、学習支援、また、各種学校施設の機能を兼務することが求められています。生徒ひとりひとりの進路達成の一助となるよう、そして生徒なりの地域貢献ができるよう、教職員と図書館が繋がり、小さな一歩をコツコツと進めていきたいと思います。


(文責 宮城県農業高等学校 教諭(科学部顧問)萩尾 斗武

                             学校司書 龍崎 小百合)


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