授業と学校図書館
授業で役立つ活用事例を「先生のひとこと」として紹介します。
先生のひとこと
トップ(校長)がリーダーシップをとれば学校は変わる!
2011-10-03 21:38 | by 村上 |
チームで取り組む図書館活用教育 松江市立揖屋小学校の巻
東出雲町は、2006年度から町全体で「図書館教育」を柱の一つに掲げた教育に取組んできました。そのなかでも、揖屋小学校では、「読書活動」と「系統的な情報リテラシーの育成」という二つの側面から迫る「図書館活用教育」を教育活動の柱の一つに於いて取り組んでいます。特に情報リテラシーの育成を図るために、各クラス週に一度の「図書の時間」の時間を設けています。この授業では、学校司書・専任司書教諭・担任がそれぞれの専門性を生かしながら、授業作りから、3人の支援による授業、振り返り、次年度のためのデータとして蓄積などをしています。9年間を見通した情報活用スキルの体系表をもとに、それぞれの学年で必要なスキルを積み上げていくことを全校体制で取組んでいるのです。
5年間の歩みは、その成果を確実なものにし、現在全国から週に1回というペースで多くの視察者が訪れるほど、注目度の高い学校になっています。その揖屋小学校の校長先生のお話を聞く機会があり、許可を得て、ここに掲載します。
東出雲揖屋小学校 加納敏視校長のおはなし
(校長先生には、このような態勢が持てた大きな理由は何かと伺いました。)
私は揖屋小学校の校長になって3年目です。揖屋小学校の前は同じ町内の隣の学校に4年間いました。2006年、当時の教育長(鞁嶋弘明氏)が「図書館を充実させよう。そのために、まず町内の各学校全てに司書を置くから、がんばろうじゃないか」というふうに申しました。そこからがスタートでした。どこの学校も重点として取り上げてやっていますが、特に揖屋小学校が多くの方々から評価をいただけるほど実践が深まったのは、研究に取り上げたということです。研究に取り上げるということは、全職員が同じ目的に向かって取組む、そのことが非常に大きな力になったと思っています。
もちろん私は、図書館活用教育を柱にして学校経営をしていくということをみんなに言っています。そのためには、学校に勤めるスタッフ全員がチームで教育に当たることが大切だと思っています。学校に於いては授業が最も大切な教育活動です。その授業が充実していくためにも、担任や専科教員は勿論、管理職も事務職員も校務技師もそれぞれの立場で、予算や環境づくりなど、様々な側面からアプローチしながら一丸となって教育にあたることが大切だと思います。
例えば、「図書館教育」を柱にしようとした場合、教頭ももちろん動きます。図書館に関わる環境改善のために大工仕事もします。事務職員も何度か予算のことで折衝してくれます。私も地域とのつながりを深め、理解を得ながら協力をして頂きます。このようにみんなで一丸となってやっているとだんだんとその面白さが分かってきます。まず、子どもが変わってくることに気づきます。当然、読書冊数も多くなります。しかし、そんな数字のことではなく、なんといっても子どもたちが目を輝かせながら授業をしている姿です。図書館に行くのが楽しくてしょうがない。そして、これは付随的なものなのかもしれません。テストの結果ですが、学力も向上もしつつあります。子どもの変容が目に見えてわかるということは、担任にとってすごくやりがいを感じる瞬間です。やったことが跳ね返ってくる喜びがあるのですよね。そうするとますます頑張ってやろうという機運が高まっていきます。
今日は、みなさんが帰られたらぜひ校長先生に言って下さい。とにかく管理職がしっかりとリーダーシップをとらないと空回りすることが多いということを。この大会は初めての参加なんですが、いろいろな全国レベルの会に出ても、どうしても参加者の発言が愚痴っぽく聞こえます。聞いていてそう言う感じがするのです。なんとかならないか・・・それがトップの考え方ひとつで変わる場合もあります。帰られたら、校長先生に直接いろいろなことをお話されたらいいと思います。うちの学校司書の門脇さんなんかは、たまに校長室に入って来られて、「こんなことをしてみたら子どもがこんなふうに変わりました」とか「こんなことで困っているのですが・・・」とか、いろいろなことを話してくれます。その話を聞いて、わたしも大変勉強になります。また、 司書が凄いのは、425名の全校児童の名前も特徴も全て知っていることです。一人一人がどんな子どもか、1年生から6年生までの授業の中に入り、一人一人を支援しているからです。全員の子どもを知っている司書というのは珍しいのではないかと思います。それだけ授業に入り込んでくれています。ありがたいなと思っています。
それから司書教諭の樋野先生は専任司書教諭体制にしてから二人目です。最初はずっと担任でしたが、前任者が転出したので、彼にお願いしましたが、またこれも楽しくてしょうがないみたいです。今までは担任としてその学年しか持っていないので、学びの系統性がわからなかった。それが司書教諭になり、1年生から6年生までの繋がりがわかり、とても勉強になっていると言っています。彼の凄いところは、今の状態で満足せず、常にいろいろなものを改善しながら前向きに頑張ってくれているというところです。
注)2011年8月2日に行われた第27回学校図書館問題研究会 第2分科会先生が使う学校図書館 に出席されたおりにお話されたものです。
尚,8月1日付けで出雲町は松江市に合併しました。
データベースにも、揖屋小学校の実践を紹介させていただきたく思っています。
また、12月23日に東京学芸大学にて開催する本事業の報告会に、揖屋小学校司書教諭樋野義之先生・学校司書 門脇久美子さんの講演をお願いしています。ぜひご参加ください。