授業と学校図書館
授業で役立つ活用事例を「先生のひとこと」として紹介します。
先生のひとこと
一度は学校の図書館に行って、使える教材を探してみよう!
2010-02-04 15:39 | by 村上 |
東京学芸大学附属世田谷中学校
社会科教諭 荒井正剛先生
図書館風景
Q.荒井先生は、図書館の資料を使ってのグループ学習を、以前から行っていますが、このような学習形態を行うきっかけはあったのでしょうか?また、その利点は何でしょうか?
A.高校生の時、地理の授業で初めてグループで調べるという体験をしました。西アジアについて調べたのですが、地下水路のことなど、今でも記憶に残っているぐらいとても面白かったのです。先生の話を一方的に聞くだけの授業よりも、自分で調べて学んだほうが、ずっと面白いし知識も定着するという原体験があったからですかね。
Q.今でも覚えているということは、相当面白かったのですね。
A.それと、教師になってから感じたことですが、地理の学習というのは、世界にしろ、日本にしろ、少々内容は違っても、結果として似たようなことを取り上げているのです。本当に全部を教師が教える必要があるのだろうかと疑問を抱いたのです。むしろ、最初に2~3の事例を教師が指導し、他の地域に関しては子ども自身が調べて発表するほうがいいのではと考え、今のようなグループ学習をするようになりました。 地理の学習というのは、学習指導要領でも地理的な見方や考え方、地域的特色をとらえるための視点や方法などを身につけることが求められています。ですから、他の教科よりは何を扱うかに関しては自由度も大きいとも言えるのです。
Qつまり、教科書を全部教える必要はないということなのですね。
A今は、地理のテストも、知識の量ではなく、考え方を問う問題が一般的なのです。だから、調べたり、まとめたり、関連性を考える力こそ必要だいえます。子ども達の発表を聞いていると、そういう力がついているかよくわかります。たとえば地図や統計の見方、活用のしかたなどもそうです。生徒の発表を見ていると、自分がどんな授業をしているかわかり、ドキッとすることがありますよ。
Q.お話を聞いていると、まず手本となる最初の講義が、いかに重要かがわかりますね。つまり子どもたちが次にグループで作業をするということを念頭に置きながら、先生は常に必要と思われる要素を授業の中に入れこんでいるわけですね。生徒の発表もいくつか見させていただきましたが、他のグループが調べたことと、自分達が調べたことの共通点に着目させたり、発表で不足の部分をきちんと補足説明をされていて、なるほどと思いました。ところで、先生は前任校では、社会科教室に必要な資料を揃えて調べ学習をされていたそうですが、今回司書のいる図書館で調べ学習をやってみて違いはありましたか?
A.授業そのものに関しては、特に違いはないと思います。しかし、何よりも、司書さんが資料を幅広く集めてくれる点は有り難かったし、資料の選び方が教師の視点とは違う幅を感じました。それから、子どもたち自身が、教師が思いつかないような資料を見つけ出してくる点も、図書館ならではと感じましたね。教室や社会科教室に本を用意する場合は、なるだけ少数精鋭的な選び方をしますからね。学校図書館が公共図書館から団体貸出を受けられるという制度も素晴らしいですね。先生たちの多くはそんなことを知らないと思いますよ。
Q.ところで、先生が2.3年と担任された学年は、今までになく図書館を利用する生徒が多かったのですが、授業をされていて、何か感じることはありましたか?
A.授業をしていて、と言われても、それはよくわからないのですが、確かに良く本を読んでいる姿を見かけましたね。前任校でも本好きな生徒は必ずいましたが、その数が違うという印象は受けました。
Q.司書の側からの印象なのですが、この学年は1・2・3年と国語の授業で、それから2・3年時では荒井先生の社会科の授業で図書館を使った調べ学習等を経験しています。3年間を通してバランス良く授業で使われたことが、本を読む生徒の裾野を広げることに繋がったのかなと実は思っています。
A.この学校に来て、驚いたのはいろいろな教科で図書館を使っていることですね。教科で図書館を使うということは、物語以外の本にも目を向けさせるいいチャンスなのですね。
Q.そういう意味では、春休みに先生が、太平洋戦争に関するノンフィクションを、特定の観点を持って読み、レポートを書くという課題を出してくださったのは、ありがたかったです。4月に実際に学習に入っていって、何か変化はあったのでしょうか?
A.かなり意識を持って授業を聞いている生徒がいたことは確かです。授業が終わってから書いてもらった感想などを読むと、春休み中に読んだ資料と結びつけて書いている生徒がけっこういました。調べ学習以外にもこのような図書館の利用のしかたもいいですね。
Q.学校によっては、せっかく学校図書館があって、調べ物といえば、パソコンルームに生徒を連れて行って、図書館はまったく使われないということも多々あります。そんな先生方にひとこと何か言っていただきたいのですが…。
A.先生は意外と自分の学校の図書館を知らないんですよ。でも、インターネットで充分調べ学習ができるかというと、そうではないと思いますよ。本ももちろん充分ではないです。もともと中学生向けの社会科教材は決して多くはないんです。でも探せばいろいろ使える資料はあります。とにかく一度は学校図書館に行ってみようと言いたいですね。どんな本があるのか、棚を見てみましょう。そして教材研究をしてみませんか。図書館には、中学生にわかるいい資料や、写真がありますから。
ありごとうございました。
(記録 2010.2.4)