授業と学校図書館

授業で役立つ活用事例を「先生のひとこと」として紹介します。

先生のひとこと

「図書館活用を計画する」ってどうするの?

2012-12-02 23:11 | by 中山(主担) |

 北海道札幌市立中学校の司書教諭 佐藤敬子先生は、情報リテラシーの育成について、学校全体の計画をつくって実践するという営みを早くから行ってこられた方です。放送大学教材でもある『新訂 学習指導と学校図書館』(堀川照代著 放送大学教育振興会 2010年)に紹介されている「年間指導計画表」について、さらに詳しく紹介していただきました。これから計画される学校図書館は、三学期に今年度の実態をまとめるところから始めてみてはいかがでしょうか。 (中山美由紀)

   「図書館活用を計画する」ってどうするの?

              札幌市立発寒中学校司書教諭   佐藤敬子

 

 12学級以上の学校に司書教諭が必置となった学校図書館法。その改正は1997年でした。その年に赴任した前任校で、図書係として図書館活用や「情報・メディアを活用する学び方の指導」を実践したり広めたりしているうち、次第にいろいろな教科で図書館が活用されるようになりました。しかし、同じような指導が違う教科でばらばらになされていたこともあって、なんとかこれを整理して体系的にできないものかと思っていました。

また、2004年には「情報メディアを活用する学び方の指導体系表」(全国学校図書館協議会)が発表されました。(後記:2019年に「情報資源を活用する学びの指導体系表」に改訂されている。)「これをもとに各学校で実践し、その学校なりの体系的な計画を作成して下さい」というお話を聞き、各教科や学年が入った見やすい表にまとめられないものだろうかと考えました。そこで作ってみたのが
 「図書館の利用と指導に関する指導計画」です。

自分ひとりではとても作れません。まず、教科・学年を担当している全教員にアンケートで聞いて、それをまとめる形にしました。「図書館利用連絡会」(当時)という各教科の代表等が集まる連絡会も作っていたので、職員会議に出す前にそこでも見てもらうようにしました。そしてその後、職員会議で決定・・・という経過をたどって初めての計画が出来たのです。

 当時はやっと司書教諭が配置されたばかりの頃。以前の「図書係」という一係教諭としてより「司書教諭」という立場での提案の方が、少しだけ説得力がありました。

また、札幌市内には寄託図書という学校間の図書共同利用制度があり、学校図書館の活用と同時に寄託図書の活用もこの計画に入れてあります。従ってその活用計画という意味でも作成する意義があったように思います。

 さて、以下は、現在の勤務校での
「札幌市立発寒中学校図書館の利用と資料・情報・読書に関する指導計画」
の作成手順です。資料とともにご紹介します。

【手順】

1,まず年度初めにアンケートを先生方全員に出します。     図書館指導に関する年度初めのアンケート 2012.pdf
 その際、前年度の実践結果一覧もつけて、それに朱書きしてもよいことにします。

2,それを教科代表に集めてもらって(集めてもらうだけ)、こちらで表にします。

3,校内の情報教育委員会(教頭、各教科の代表、司書教諭で構成。司書教諭が推進役)に提出し、内容的によいか、重なりはないか等をチェックしてもらい、なるべく系統的になるように話し合います。 情報教育委員会2012 4月.pdf

4,職員会議で提示、決定します。

※5月には後出の【研修】にあるように、全体研修の中で15分程度説明をします。

あとは実行あるのみ。

学期ごとに図書館の利用状況を職員会議で出しています。実施状況のチェックにもなります。(「ひとこと」の所に言いたいことを好きなだけ書いています。)  1学期利用状況2012.pdf

5,年度最後に、教科ごとに「計画」に加徐訂正をしてもらい、結果を司書教諭が「実践結果一覧にまとめ、情報教育委員会で確認します。その際、情報教育・学び方についてのアンケートも出し、記入もしてもらいます。  情報教育・学び方の指導アンケート2011.pdf

6,その後、確認された「実践結果一覧」を年度最後の職員会議に出して実施状況や問題点も含めて解説します。また、5.ノあっけ―とでまとめた結果も出して説明し、次年度の参考にします。  実践結果一覧2011.pdf 情報教育・学び方の指導アンケート2011まとめ.pdf


【研修】

ただ、この方法が軌道に乗るためには、先生方に5月にある最初の研修会で、次のことについてお話をします。

・図書館とはどういうところか

・司書教諭は何をするのか

・図書館の指導にはどういったものがあるのか

・「学び方の指導」とは何か

 その指導項目は本校ではどうしているか?

     ・・・等々  校内全体研修会資料 2012.pdf

 それをして初めて理解してもらうことが出来、アンケートにも書いてもらえます。
  本校に赴任した当初、「前任校でもやっていたから」とあまり考えずにアンケートを出したら、よくわからないと言われ、3通しか戻ってきませんでした。
 そこで初めて、先生方への研修の大切さを知ったのです。
 以来毎年、全体研修の中で15分程度このお話をしています。

【成果・反響】

図書館活用の計画表をまとめる過程が、何より教職員への意識づけとなっています。初めのアンケートをまとめ、情報教育委員会にかけてもんでもらい、4月の職員会議には2回出します。2回目に決定。その後さらに5月の研修会でも出すので、いやでも少しは意識してもらえるのです。また、この計画は、司書教諭である私自身が、各教科の実践について「先生、そろそろ寄託図書を借りましょうか。」と忘れずに声をかけやすくなります。

 教員の中でも、系統だった「学び方の指導」(情報リテラシーの指導)の意識が出始め、例えば今年などは、保健体育科が4月にもう1年生の調べ学習で図書館を活用するから、その前に国語科で「情報カード」の作成法を指導してほしい、という声が上がってきて、慌てて国語科での指導を早めたくらいです。

 生徒の方でも、レポートづくりや調べることが普通になってきており、かなり体系的な学び方による力がついてきたように思います。

 


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