授業と学校図書館

授業で役立つ活用事例を「先生のひとこと」として紹介します。

先生のひとこと

「エパミナンダス」の好きな場面を絵にかこう

2011-02-23 11:39 | by 小野寺 |

小2国語「お話びじゅつかんを作ろう」の実践インタビュー
                      
                          東京学芸大学附属大泉小学校  小野恭子先生
司書
この「エパミナンダス」の活動をしようと思われたのには、何かきっかけがあったのでしょうか?
 
先生
1年生では、動物が出てきたり、動物が主人公になったりする物語を、学級内で紹介する活動に取り組みました。そのときは、子どもたちにどの動物が出てくる話かを描かせたのですが、その絵が物語の挿絵そのものだったんです。ですから、次は読んだ話から想像して絵を描かせたいなと思っていました。
2年生も持ち上がりの学級で、2学期に自分の好きな本を紹介する単元が教科書にあって、ぜひ今回は、子どもたちが物語に対して持っているイメージを絵で表現させたいと思い、この実践をすることにしました。
 
司書
図書の時間は毎週1回ずつあるので、子どもたちはこれまでにいろいろなお話を聞いてきましたが、全員が「エパミナンダス」を描いたのはどうしてですか? 先生が選ばれたのですか?
 
先生
子どもたちに、図書の時間に聞いたお話で覚えているものを挙げてもらいました。そのとき、絵本の読み聞かせはのぞきました。固定したイメージがないものがよかったので。その中で子どもたちに一番人気があったのが「エパミナンダス」だったんです。確かに、子どもたちはいつも笑いながら聞いていましたよね。前に聞いたことがあって、展開がわかっているのに、大笑いしますよね。
 
司書
お話を聞いている子どもたちは、本当にお話の中に入り込んでいるようで、イメージをふくらませて聞いているという感じが私はしますが、小野先生は「お話」にどんな印象をお持ちですか?

先生
読み聞かせだと、どうしても絵に集中してしまい、話の語尾や語り手の口調に集中することができませんが、「お話」を聞いているときの子どもたちは、ことばに集中している様子がわかります。抑揚とか声色とか、お話の中身はもちろんですが、いつもよりお話に引き込まれている感じが私もします。そんな子どもたちの様子を見ながら、自分もお話に引き込まれてしまっているんですが……。

司書
題材のお話が決まってからの活動は、どのように進められたのですか?

先生
絵を描く前に、教室でもう一度小野寺先生(司書)にお話を語ってもらいましたね。そのあとは、それぞれが好きな場面を、画用紙にクレヨンで描かせていきました。となりの席の子の絵は覗かないようにと伝えたので、はじめは、自分の絵を描くことに夢中でしたが、絵が完成し始めると、子どもたちは友だちの絵と自分の絵の違いに気づき、その違うことを楽しみながら鑑賞し始めました。印象に残っている場面は同じでも、それぞれ背景が違ったり、登場人物の服装が違ったりしていました。語られたお話では、そこまでことばで表現されていなかったと思うので、子どもたちの中にこうしたイメージが広がっていたんですね。
作品を掲示するときには、どうしてその場面を選んだのかと絵の題名を記述させましたが、これも子どもたちの想像力豊かな表現で、お互いにどうして絵が違っていたのかがわかるきっかけになりました。

司書
廊下に掲示された絵は、私もその前を通るたびに足が止まり、ずいぶん楽しく見せていただきました。先生が作られた表示が「何のお話の絵でしょう?」というタイトルだったので、私も他の学年の図書の時間に「みんながよく知っているお話の絵が掲示してあるから、ぜひ見てごらん。何のお話かわかるかな?」と絵の宣伝をしました。

先生
廊下を通る他の学年の子どもたちもすぐに「エパミナンダス」だと気がついて、「この話知ってるよ!」と話しかけてくれる子もいました。

司書
この実践をされてみて、いかがでしたか?

先生
子どもたちの発想力に驚かされました。最後にエパミナンダスがパイをふんづけてしまった場面。同じ場面を描いているのに、ホールのパイを描いている子がいれば、ピースのパイを描いている子もいる。エパミナンダスがパンを水に浸けてしまうところでは、川を描いているけれど、川幅が違ったり、周りの風景が違ったり。その違いも、子どもなりの理由があることがわかって、新たな発見でした。
また、保護者の方からも、子どもたちが家に帰ってから「エパミナンダス」の絵を描いたことを話題にしていたということを伺って、子どもたちも楽しみながらこの活動に取り組めていたことがわかりました。

司書
では、最後にまだ学校図書館をあまり利用したことのない先生に、何かメッセージがあればお願いします。

先生
学校図書館を利用すると、自分のやりたい授業や活動をおこなうときに、教師自身がアイディアや授業のヒント、資料を得ることができるのはもちろんですが、子どもたちの活動にも幅が出てきます。早めに「こんな本がありますか?」と相談すると、いろいろな場所から探していただけるので、とても助かっています。これまでも、「鳥の知恵」、「おもちゃ大会」(共に国語)、「豆腐作り」「韓国学校との交流」(共に総合)と、子どもたちが調べる学習を図書室でおこなうことによって、地元の図書館でもどこに何があるかすぐにわかるようになったなど、よさが広がっています。ぜひ、学校図書館、司書の方と連携をとってみることをおすすめします。

司書
ありがとうございました。

聞き手:附属大泉小学校 司書 小野寺愛美

 


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