授業と学校図書館

授業で役立つ活用事例を「先生のひとこと」として紹介します。

先生のひとこと

やってみました!小学校でリテラチャー・サークル

2013-04-06 09:07 | by 村上 |

 おおさわ学園三鷹市立羽沢小学校では、昨年度学校司書と担任が、子どもたちの読む力を育てる手立てのひとつとして、リテラチャー・サークルに取り組みました。そこで、学校司書の金澤磨樹子さんに、授業の様子をレポートしていただきました。
 

.リテラチャー・サークルとは

 リテラチャー・サークルは、1990年代からアメリカで盛んになった読書指導法です。

3~5人のグループで同じ本を読んで話し合う活動です。自分の読みを仲間に伝え、友だちの読みを聞くことを繰り返すことによって自然に上手な読み方、伝え方ができるようになると考えられています。下記のような流れで行います。

   提示された本の中から、読みたい本を選ぶ。ただし、これまでに読んだことのない本。

   同じ本を選んだ者でグループになる。(3~5人)

   グループごとにその日の読む範囲を決める。

   決めた範囲を読むときは、グループ内でそれぞれの役割を決めて読む。必ず全員が違う役になる。

 ・思い出し屋・・・この本で読んだことと、他の事のつながりを発見する役目。

 ・質問屋・・・疑問に思ったこと、グル―プで話し合いたいような質問を作る役目。

 ・言葉屋・・・読んだ中で特別な言葉を見つける役目。

 ・段落屋・・・音読したい段落や話し合いたい段落を選ぶ役目。

 ・イラスト屋・・・自分の好きなことや場面などを絵にする役目。

 *役割ごとのワークシートを用意し、それに書き込みながら読み進められるようにする。

   役割に基づいて読んだことをグループ内で話し合う。

   ③~⑤を何回か繰り返して一冊の本を読み切る。毎回、役割はかえる。

⑦ グループで話し合ったことをクラスに紹介する。

.羽沢小でリテラチャー・サークルをはじめた理由

 高学年の読書する姿を見ていて、読む力はあるのに簡単で楽に読める本にしか手を出さない子、本は借りていくけれども読んでいない子が多く見られることが気になっていました。高学年の読書をもっと豊かなものにするために何かできないかと考えていました。そんな時、新潟大学教育学准教授の足立幸子先生のお話をお聞きする機会を得、早々、リテラチャー・サークルを実践してみることにしました。

.リテラチャー・サークルの計画

 ①実践学年  

4年生(23名×2クラス)&5年生(38名 1クラス)

 ②課題本の準備  (リテラチャー・サークルブックリスト.xls

4年生・・・12タイトル×4冊  5年生・・・10タイトル×4冊

 ③リテラチャー・サークル1時間目  

   担任がリテラチャー・サークルのやり方を説明する。司書は、課題本の簡単な紹介をする。第3希望まで書いてもらいグループわけをする。
 

        ←      ( 写真 1時間目の板書)

 

 

④リテラチャー・サークルの開始

   2学期から図書の割り当て時間(1週間に1回)を利用して行った。

  <授業の流れ>

・読み(15分)・・・グループ内でその時間に読む範囲を決め、読み始める。

・書く(10分)・・・自分の役割のワークシートを書く

・話し合い(10分)・・・書いたワークシートをもとに話し合う。

・まとめ(3分)・・・今日のリテラチャー・サークルについて担任からはなす。

・図書の時間の貸出・返却(7分)

*1冊の本を読み終わるまでに図書の時間を約9回使用。

 ⑤リテラチャー・サークル終了後(図書の時間を約2回使用)

   4年生は、グループで八つ切り画用紙に読んだ作品のポスターを書いた。5年生は、国語の教科書にある帯かポップを各自作成した。
        ( 写真↓  ワークシート )                     (4、5年生の作品 写真↓)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
. 子どもたちの変化・成果

時間内にグループで決めたページまで読まなければならないし、自分の役割のワークシートも書かなければいけないので、どの子も真剣に読んでいました。リテラチャー・サークル後に感想を書いてもらいました。それには、「いつもは字の大きな簡単な本しか読まなかったが、字の小さな長い本も読めたことが嬉しかった。」「自分では気がつかなかったことをみんなと話すことで気がついた。」「ちょっとずつしか読めないのが嫌だなあと、はじめは思ったが、区切って読むことでワクワク感が増した。」「みんなと仲良く話し合うことができてうれしかった。」「一人で読むより深く考えて読めた。」などなど、うれしい感想がたくさん寄せられました。

.課題や問題点

・図書の時間(週に1時間割り当てられている時間)の45分で読み・書き・話し合い・貸出ということをすべてこなすわけです。細切れの時間になってしまい、十分読まないうちに書いたり、話し合ったりをしなければならないわけで、ワークシートは書けないし、話し合いも盛り上がらないといったことになってしまった。

・図書の時間だけで行ったため、1週間に1回しかできなかった。そのために時間があきすぎ、1冊読み終わるまでに長い期間がかかってしまった。

・その時間ごとに計画を立てさせたが、全体計画(何回で読み終わろう)も必要でした。

・役割シートの書き方の練習や良い話し合いのモデルを見せるなどの準備期間も必要でした。

・話し合いが盛り上がらなかったので、一問一答のようなクイズ形式の質問はやめましょう。「話題を友だちに振ってみよう」「話し合いは、おしゃべり感覚でやってみよう」とアドバイスをしました。
 
.その後の読書の様子

    リテラチャー・サークルで自分も読めるんだと自信をもった子が多く見られました。そこで、このまま終わらせるのはおしいということで、3学期は「ペア読書」を行いました。同じくらいの読みの子同士でペアを作り二人で同じ本を読み進めます。リテラチャー・サークルのように役割シートは書かないで、二人で読んだところまでについて自由におしゃべりをします。この本は、学級文庫として各クラスに置き、自分たちで時間を見つけて読みました。話し合い(おしゃべりタイム)は、図書の時間に10分とりました。約1ヶ月で読み終わるようにペアで読む計画を立てました。

 「  リテラチャー・サークル」「ペア読書」と取り組んできました。すぐに飛躍的に読書できるようになるわけではありませんが、今回の経験が今後の読書に少なからず影響を与えていることは確かなようです。自分が読んだシリーズの続きを読んだり、友だちが読んでいた本を読んだりと広がりが見えてきています。

.先生方の感想

 
小田先生
子ども達は、リテラチャーサークルに関心をもち楽しんで学習できたと思います。特に読書が苦手な子、自由に読ませていると進まない子にとっては、細かく区切ってそのことを話すことは有効的であったと思います。また、役割分担をすることで、意識をもって読書できたということが方法の一つとして知れたことが良かった思います。形式ばった話し合いよりもおしゃべり感覚で内容を話しあうことで様々な意見がでたことも良かったです。
 今まで図書といえば本を選び、その本をそれぞれが読むだけでした。この学習方法では、話し合いのスキル、役割(視点)を意識して読むスキル、人の意見を聞き、違った価値観を知れるなど利点が多くあります。本の用意や授業時間の確保など大変な部分もありますが児童の読書への関心、読む力は確実にあがると考えています。
 
小松先生
・活動をはじめる前に、大人数人が1グループになり、リテラチャーサークルの取り組み方を示すと分かりやすい。(特に、読書後の話し合いの場面でつまづきが見られた。)
・グループ編成は、児童の実態に合わせて、教員が編成したほうが良い。(高学年の場合、思春期の入口に入っているため、中には男女ともに本音で話すことに抵抗を感じる児童もいる。)
・活動としては、ただ読書をすることに比べると、グループ活動なので、友達がどんなことを考えているのか、また思っているのか等、様々な視点で捉えられるのでとても良い活動だと感じた。
・経験を積んでいくことで、更に長い物語文を読み進めていくきっかけになると感じた。
山下先生 
                                                                                   
 
 ふだん国語を苦手としている児童でも、一緒に進める楽しさを見出し読書に親しんでいる様子が見られとてもうれしく思いました。また、ふだん中々友達とのコミュニケーションがうまく図れない児童の感想にリテラチャー・サークルで友達と役割分担しながら楽しく取り組めたと書かれていました。グループ編成に配慮することで関係性も考慮しながら進めることができたと思います。とても素敵な取り組みだと思いました。

 
4年生、5年生へのリテラチャーサークル、事前の準備や進めていくうえでの丁寧な関わりが必須のようですが、学校司書も先生も、確かな手ごたえを感じている様子が伝わってきます。反省点も含め、その後の子どもたちの姿も伝えていただきました。この記事を読んでの感想などありましたら、ぜひ当サイトにお寄せください。
(文責 東京学芸大学附属世田谷中学校 村上恭子)

 

 


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