授業と学校図書館

授業で役立つ活用事例を「先生のひとこと」として紹介します。

先生のひとこと

佐藤先生の実践に憧れて ―札幌市立中学校訪問記その2― 

2014-07-15 01:24 | by 中山(主担) |

工学院大学附属中学校・高等学校 司書教諭 有山裕美子

 

1.はじめに

 

 山本さんから、バトンを受けて訪問記(補足版)を書かせていただきます。もともと、佐藤先生の実践を知ったのは、図書館総合展での発表。兼任の司書教諭でありながら、授業との連携はもちろん、図書館の使いやすさの工夫、選書、そして図書局の活動など、様々な実践をされていて、とにかくびっくりしたことを良く覚えています。忙しくても時間は作る!その時から、佐藤先生の実践を是非生で見たいとずっと思い続けてきたのですが、ついにここに来てようやく実現しました。

 私自身、専任の司書教諭でありながら、つい忙しいと言い訳して、仕事を先延ばしにしがちです。佐藤先生が時間を有効に使いながら、図書館に関わられている様子は、憧れであり、圧巻です。また、公立学校の教員は、私学と違って、異動が前提です。限られた時間の中で、目の前の生徒たちのために何が出来るか。佐藤先生の学校図書館に対する姿勢は、とても学ぶことが多いです。私が感じたその思いを少しでも皆さんにお伝えできればと思います。

 それでは、山本さんにならって、2つの中学校を見学させていただいた感想を、順番にご報告したいと思います。

2.札幌市立発寒中学校図書館

(1)掲示物

まずは、「ぶくぞうくん」! 直接見るとなおさら感じる、このインパクトと存在感。図書館を知ってもらうためには、こういうキャラクターは大事です。

そして、図書局の生徒たちの掲示物。どれも力作で目を惹きます。その掲示物が、図書館をとても明るく、そして親しみやすく演出しています。カウンターにはお手製のモビール。何とも温かく素敵なお出迎えです。

この発寒中の生徒作成の掲示物の特徴は、立体的なものが多いことです。ご紹介したい作品はたくさんあるのですが、その中からひとつ。たとえば、くどうなおこさんの『のはらうた』を紹介する掲示物があります。(写真)この作品、てんとうむしと、のはらうたの文字が立体になっていることが、おわかりいただけるでしょうか。こんな素敵な掲示物が、所狭しと図書館に飾られ、そのうえ、司書室にも出番を待っている作品が、たくさんありました。この力のいれ具合を見ただけで、図書局の生徒たちが図書館をいかに愛しているか、伝わってくるようです。

山本さんの「12作品頂いて帰りたいほど」は、まさしくその通り!佐藤先生、今からでも、頂けないでしょうか?

 (2)参考図書コーナー

山本さんの報告にもありますが、生徒たちのレポートが、力作揃いです。また、図書館が学習の拠点となるように、佐藤先生は、レポートを書く上での情報収集、まとめ、最後にレポートにするというプロセスについてしっかりと指導されています。指導をおこなう上では、工夫を凝らしたワークシートや情報カードの活用など、学ぶべき点がたくさんありました。忙しい中でどうしたらそこまで目を配れるのだろうと、感心してしまいます。

さらには、学校全体で取り組むためには、自分の授業、あるいは国語科の中だけで取り組んでいたのでは無理です。どうやって、学校全体の取り組みにするか、他の先生方に周知徹底していくかと言うことが重要になってくるかと思います。この辺りは、佐藤先生のご報告を待ちたいと思います。

 

(3)引き継ぐことの大切さ

 この視点は、私学、それも専任であるとその場に甘んじて、ついつい後回しになってしまう点です。学校図書館のレベルを維持していくためには、誰が来ても変わらないもの、あるいは一度上げたクォリティを下げないという体制が必要です。佐藤さんと山本さん、お二人の公立中の方の会話を聞きながら、それは私学であっても変わらないと言うことを実感しました。

 ところで、今回、私たちをご案内下さったのが、佐藤先生の後を引き継いだ本間先生です。一緒にまわる間も、佐藤先生といろいろ話をされています。あれはどうなりましたか、とか、これはこうした方が良いですよね、とか、短い間にも打ち合わせ。ご自分が引き継いだ発寒中の図書館をさらに発展させていこうとする、その真摯な姿勢にまた感動。こうやって引き継がれていくことが、たとえ異動が前提の公立学校でも、質の高いサービスを提供できる秘訣なのだと再認識しました。

 

 (4)おまけ

 さて、入り口近くには、こんな本が。(写真)この本の作者、高山美香さんは、札幌のお生まれだそうです。郷土作家を捉えてすかさず展示。こういったフットワークの良さも、学校図書館には必要です。表紙の一葉さんと鷗外さん、実はこれ、イラストではなくて人形だそう。何とも和む、可愛らしい人形です。

 

                         

3.札幌市立宮の丘中学校図書館

(1)そして新しい中学校へ

 そんな佐藤先生が4月に異動されたばかりの、札幌市立宮の丘中学校へ、私も移動!山本さんが触れなかった場所にフォーカスしてみます。

まずは、カウンターです。(写真)手作りの「返却」「貸出」の案内に、リラックマや可愛いぬいぐるみたち。何とも可愛らしいカウンターですが、実は佐藤先生着任時にはカウンターがなかったそう。ということで、この宮の丘中のカウンターは、佐藤先生が来てからの大改造によるものなのです。図書館の顔はやっぱり大切です。

 こちらは、特集コーナーと新聞。比較的入り口の近くにおいてあって、手に取りやすい印象です。テーブルクロスも敷いて、図書館の雰囲気を明るく華やかにしています。お昼休みに、このテーブルを囲んで、生徒たちがおしゃべりをする様子が浮かんできます。かび臭い倉庫のような図書館から、明るくて綺麗な図書館へ。生徒たちも、ぐっと利用しやすくなったと思います。

 手の入らなかった図書館を明るく開放的で、親しみやすい図書館へと改造していくためには、いろいろな仕掛けが必要です。時に用務員さんや生徒たちを巻き込みながら、不要なものの撤去、片づけ、リニューアルの奮闘の様子もまた、佐藤先生の報告を待つことにしましょう。周りの人を上手に巻き込みながら進めていく、それはきっと、一人職場の多い、学校図書館職員にとって、必要なテクニックの1つであることは、間違いありません。

 

(2)なんとか形に

こちらは、小説のコーナー。思いがけず新しい本が多くてびっくりしたのですが、この本が今まできちんと排架されていなかったそう。どんなに良い本がたくさんあっても、それが適切な形で生徒たちに提供されなければ、死蔵されているのと同じです。これらの本を、きちんと分類された形で提供する。利用しやすくなった生徒たちに「良かったね!」と声をかけたいのはもちろん、書架に並んだ本たちにも、「良かったね!」と思わず、声をかけたくなりました。

図書館にとって大切なもの、施設や資料はもちろんですが、最終的にそれを動かしていくのは、やはり「人」です。改めて、「人」の大切さを実感しました。

 

 何だか感想を書き散らした感じですが、次は佐藤先生! 是非、今回の改造の苦労と成果を、熱く熱く語って下さい。佐藤先生の頑張りを見ながら、また頑張ろうと思った私です。


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