授業と学校図書館

授業で役立つ活用事例を「先生のひとこと」として紹介します。

先生のひとこと

九州から北海道へ ―札幌市立中学校 訪問記 1 ―

2014-06-26 00:28 | by 中山(主担) |

長崎県立佐世保市立大野中学校 司書教諭 山本みづほ

1.はじめに

 札幌の佐藤敬子さん ( 「図書館活用ってどう計画するの?」を執筆 ) が、8年勤務した学校から2013年春に異動。そしてまた1年で異動となり、図書館づくりに悪戦苦闘していることをフェイスブックで知り、東京の有山さんと長崎の山本が現地を訪問、お話をうかがってきました。

 私もそうですが、公立中学校の司書教諭は、異動前の学校で数年かけてやっと作り上げ軌道に乗せた図書館と泣く泣く別れ、次の学校に赴任。そこが、よい図書館ならラッキー!ですが、ほとんどが前任校での長い工程作業のやり直し。そこでまたある程度のものを作り上げたらまた次の異動・・・。賽の河原で小石を積み上げては崩されていく、あの感覚で過ごしてきました。そんな環境の中、へこたれることなく生徒を巻き込み、見事に図書館を再生し授業に活用していく「司書教諭 佐藤敬子先生」の足跡をたどります。
 その後、工学院中・高校の有山裕美子さんに補足をして戴き、現在の授業の様子を佐藤敬子さんに報告して戴くという、
3人のリレーを行うことになりました。今回はその第1弾です。

.札幌市立発寒中学校図書館

(1)掲示物

まずは、佐藤敬子先生が8年間勤務 (2004~2013年)された学校。

廊下に張り出されたマスコットキャラクター「ぶくぞうくん」が、のどかな雰囲気を醸し出していました。










入口を入ったところで、委員会活動で図書局の生徒たちが作ったという掲示物に圧倒されます。歴代の図書局員は、その作品を見ているので年々バージョンアップ。立体的な本の紹介がとにかく楽しいのです。          
 

                           

 






毎年卒業した一人一人の局員の今までの作品の中でグランプリを佐藤先生が決めて殿堂入りさせ、お披露目するのが、図書局員の楽しみだそうで、みんな目が肥えているので、作成も手が込んでいて本当にため息が出るほどの力作ぞろいです。放課後や、自宅持ち帰りで作成するというこの画用紙大の本の紹介、12作品戴いて帰りたいほどでした。


(2)参考図書コーナー

 授業でしっかり図書館を使うため、「情報カード」も常備され、生徒たちのレポートも年度と学年ごとにきちんとファイルして書架に並んでいます。













先輩たちのレポートを見ることで、後輩の力はぐんと伸びます。イラストの入れ方、まとめ方、百聞は一見にしかずでありそれが身近な存在の作品ですから、どんなにうまくまとめられた既存の資料を見るより「学び取ろうとする意欲」を喚起します。ここが学習をサポートする図書館であることが、よくわかりました。
 


テーブルには
1冊ずつ国語辞典が置かれていて、いつでも学習のお手伝いをしますという姿勢がうかがえます。テーブルごとにおいてあるゴミ箱も、消しゴムのかすや切り取った資料の余白などをすぐに捨てられるように配慮されていて、学習に活用される普段の姿が垣間見えました。

                            

 














(3)引き継ぐことの大切さ

 学校司書配置のない札幌市は、司書教諭や図書館担当教諭の力量ひとつにその運営が左右されます。札幌市内にも、図書館の役割を果たしていない「本の倉庫」と化した学校図書館はあるようです。幸い発寒中学校は、佐藤先生の次の担当の本間先生にきちんと引き継がれ、本間先生は今回私たちを案内するドライバー役まで買って出てくださいました。この人間関係が、佐藤先生が異動されて丸1年を過ぎても現状を維持して活用される図書館を継続させているのだと思いました。

                         

3.札幌市立宮の丘中学校図書館

(1)異動とともに行ったこと

 そんな佐藤先生が2014年4月に異動されたばかりの学校が、札幌市立宮の丘中学校です。

異動してすぐに、図書館内の掃除と物を捨てることから始めたと語る佐藤先生。毎日ほこりまみれになりながらの放課後の奮闘ぶりを見て、志願して手伝う生徒が一人増え、二人増えして・・・。その苦労がしのばれるすっきりした館内。未だ捨て切れぬ物も多々隣の司書室にはあるようですが。ビフォーの写真を見せて戴くと、部屋の真ん中に背の高い書架があり、1学級の生徒が座れるスペースはなく、図書館で授業をするという認識がなかったことをうかがわせます。破れたままのカーテンや、ダニの巣窟となっていたというソファの存在に今までのこの学校の「図書館」の使われ方がわかります。

    











↑入口を入ったところ     
  佐藤・本間両教諭から話を聞く有山さん→

 

まずは授業ができるように、1学級の生徒数の椅子をそろえた学習テーブルを何とか配置し、参考図書コーナーを作ることが、学習センターとして機能するための喫緊の課題。それをわずか1か月半でやってのけるところがさすがです。生徒たちの手伝いで、放課後は、ほこりにまみれながら本の整理をして、物を捨てて、気づいたら8時だったという過酷な日々。それでも、少しずつ図書館らしくなっていく館内を見渡すと、ついついうれしくなってしまう気持ち、お話を伺いながらうなずくことしきりの私たちでした。

(2)なんとか形に

授業が行える状態を作り、さっそく職員に向けた研修会で図書館のありかたと司書教諭の仕事についての話の場を設け、「図書館学活」で全校生徒に放送による図書館の利用の仕方を指導。ほんとうに短い期間でよくもここまでという図書館活用のためのアクティブな行動に感服。公立学校の司書教諭の置かれた立場には、本当にため息が出ますが、佐藤先生の「折れない心」と信念に感動しました。

これから佐藤先生がこの学校にいらっしゃる限りは、この学校図書館は大きな進化を遂げていくことでしょう。そして後を引き継ぐ司書教諭がいれば、発寒中のようにそれを維持していくことができます。しかし、司書教諭としての発令はあっても次の担当が、どこまでそれをなし得ることができるでしょうか?学級担任、部活動、各種の主任の仕事があれば、図書館に足を運ぶ回数が減るのは必至です。これを解決するために、「学校司書」の存在は大きいと私は思うのですが。

昨年度、このサイトに事例をたくさんUPして戴いた私の勤務校も、今年度は司書配置がなく、せっかくの学習センターとしての活用も1年きりの取組に終わりそうです。今は、読書センターとしての図書館の地位だけでもなんとか守り抜こうとしていますが。いかんせん時間がありません。週20時間、2学年にまたがる国語の授業を持ち、週3日勤務の司書が24時間かけてやっていたことを隙間時間に行うのは不可能です。管理職からは「体を壊さない程度にやってくださいね。ひとりで無理なことは分かっていますから。」といわれますが、果たしてこの「賽の河原」方式のままでいいのかと、今回のリポートをまとめながら考えた次第です。

もう少し違った観点から、有山さんにコメントを戴き、その後、宮の丘中での図書館を使った授業の報告を佐藤さんにして戴くというリレーを行います。

 

では、次回は有山さんにバトンタッチします。



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