読書・情報リテラシー
保育実践 新聞ごっこ
2012-12-09 20:20 | by 中山(主担) |
今日から明日へつながる保育〜しんぶんごっこを通して〜
東京学芸大学附属幼稚園 小金井園舎教諭 吉川和希
*「東京タワーが曲がっちゃった!!」―Tくんの新聞づくり
ある朝、Tくんが
「大変だー!!あー大変だ!!東京タワーが曲がっちゃった!!」と叫んで登園してきました。
そして、「新聞をつくる。」と言って慌てて紙とペンを用意しました。
息をきらしながら、ぎこちないひらがなで何とか書き上げたものが、
『あさひしんぶん』でした。
強い筆圧と何度も黒く塗りつぶした跡からは、
文字より先にあふれてきたTくんの思いが想像できました。
平成23年度の冬休み前に、教師は、
充実した冬休みになるようにと『こどもしんぶん』を作って子ども達に配りました。
冬休みが明けると、遊びの中で新聞を書く幼児が出てきました。
Tくんはそれらに刺激を受けて、
東京タワーが曲がった情報を、新聞に書くことを思いついたのです。
そのようにして始まったのが、新聞ごっこです。
*新聞局で、仲間と新聞づくり
保育室に新聞局ができ、新聞作りが続いていくと、仲間も増えました。
家庭で新聞記事を切り抜いて幼稚園に持って来るという習慣もできました。
学級のみんなや教職員が、
新聞を通じて情報を受けとめたり、思いのやりとりをしたりするようにもなりました。
そして、幼稚園生活が残りわずかとなった頃、
Tくんは、『さよならしんぶん』を作ることを決めました。
*教師の目
新聞ごっこを通して、
Tくんは自分のこだわりに誇りをもって、自分で自分の新聞を作ってきました。
そこには個の課題を追及していく姿があり、
共同作業や役割分担があったわけではありませんでした。
しかし、この取り組みの背景には、
新聞を通して情報や思いをやりとりしていく仲間の存在があり、
ゆるやかではありますが、
確かな協同性があったことを感じさせられました。
当時、協同性の研究をしていて、
「個のこだわりと協同性は共存するのか」という問いに直面していた私たちにとって、
一つの大切な事例となりました。
また、文字や情報についてどう捉え、
それらを通してどのように育ちを支えていくか、考えさせられる機会となりました。
2012年 全国国立大学附属学校連盟 関東地区大会 発表事例
(2012年12月16日)