読書・情報リテラシー
「メディアのめ」で児童生徒のメディア・リテラシーの育成を
2013-10-26 10:21 | by 村上 |
NHK Eテレで 2012年4月から2013年3月まで全20回放送された教育番組 「メディアのめ」が本になって出版されました。 『池上彰と学ぶ 、メディアのめ』 (NHK「メディアのめ」制作班 池上 彰著 NHK出版 2013年4月)です。
これを機会に、この番組に企画・協力をされた佐藤和紀先生に番組の解説をお願いしました。
本の方には、番組では紹介しきれなかった話やより発展させた話も盛り込んであります。
番組のWebサイトにもある動画や教材ともども、活用してみてはいかがでしょうか。
これを機会に、この番組に企画・協力をされた佐藤和紀先生に番組の解説をお願いしました。
本の方には、番組では紹介しきれなかった話やより発展させた話も盛り込んであります。
番組のWebサイトにもある動画や教材ともども、活用してみてはいかがでしょうか。
「メディアのめ」で児童生徒のメディア・リテラシーの育成を
NHK Eテレ「メディアのめ」番組委員
東京都北区立豊川小学校教諭 佐藤 和紀
日々進化していくICTメディアや日常の生活場面で出会うメディアについて、
NHK学校放送番組「メディアのめ」はジャーナリストの池上彰さんが
10分間でわかりやすく解説してくれる番組です。
メディアのめ 小学4~6年・総合的な学習の時間
放送日 毎週木曜日 午前9時30分~9時40分
ソーシャルメディアやポータブルゲーム機への使い方についても指導しましょう
インターネットやケータイは、個人的な使い方をされることが多いものですが、時に全世界へと発信することができるマスメディアにもなります。とても便利だからこそ急速に発展し続けている反面、個人的ですから私たち大人は子どもたちの使い方を把握することができないことも多く、悪い方向にも急速に進んでしまいます。マスメディアという要素もあるからこそ、悪いことはあっという間に広がってしまいます。特にここ2~3年でスマートフォンが普及し、facebookやLINEなどの様々なモバイルツールやソーシャルメディアサービスが登場し、ポータブルゲーム機のネット端末化なども含めて、常に新しい対応を迫られています。
第15回放送予定の「ケータイ①メール編」では、メールのメリット、デメリットについて取り上げます。この教材を教科で学習する場合は、国語の「手紙の書き方」で手紙とメールの違いを比較して、特徴を話し合うことでメディアの特性に気づかせる授業ができます。手紙は書いてから何度か見直して、誤字脱字をチェックして、ポストに投函します。しかし、メールは手軽さゆえにチェックをしないで送信ボタンを押してしまいがちです。パソコン室に行き、実際にメールのやりとりの体験をさせながら、手紙とメールのメディア特性に気づかせることによって、メールを書く時に注意すること、心がけることをグループやクラスで話し合いをすることでルールづくりを行うのもいいでしょう。このような活動を通して、手紙の書き方に戻ったときに、以前よりも言葉を慎重に選んで書いたり、辞書を使って意味を丁寧に調べたりして手紙を書く児童が現れます。手紙そのものを勉強するわけですが、他の伝達方法を学ぶことによって手紙の良さにも気がつき、言語活動も充実します。
第19回放送予定の「著作権」ではCDのコピーを事例に著作権の仕組みを学びます。デジタルデータは加工が容易であり、著作権について慎重になる必要があるのですが、状況を見ると子どもも大人も、そして教師も著作権については曖昧で不確かです。例えば学校で教師は日々様々なものを印刷したりコピーしたりして、子ども達に配布したり、授業で使用したりしています。その中で著作権を侵害しているものもあるかもしれません。「人の物は勝手に使ってはいけません。使う時は許可を得てから使いましょう。」生活指導の基本ですが、道徳の授業でも扱われるものです。人が創造し、作り上げた物にも権利があり、許可を必要とすることを、先生も子ども達と一緒に考えてみてはいかがでしょうか。
テレビは依然として児童のメディア接触時間が長いメディアです
「テレビで言ってたから本当だよ!」そんな台詞、教室で子ども達から一度は聞いたこと、ありませんか?そう言われるたびに私は「じゃあテレビのいうことは全部信じるんだね?」と言い返してしまいます。インターネットや携帯電話など、以前よりも私たちの生活には様々なメディアが入り込み、とても身近な存在になっています。しかし、どの調査をみても小学生のメディア接触時間が圧倒的に長いのはテレビです。子どもとテレビはとても近い存在です。
一歩立ち止まって情報を見つめる力を身につけよう
「メディアはすべて構成されたものである」という言葉があります。幼い頃から長い時間テレビと接していると、テレビが言っていることのすべてが本当のことだと思ってしまうようです。当然、真実を伝えるのがマスメディアの役割ですが、そこには優先順位があり、写らないものがあり、時に誤って報道されてしまうこともあります。だからこそ、映像を見て、一歩立ち止まって考える力が必要です。
第10回の「気持ちを動かすCMのヒミツ」では、どのような工夫がされてCMが作られているかについて取り上げます。車のCMなのにモデルやアイドルが登場したり、シャンプーのCMなのに南の島で撮影したりします。CMで取り上げられている商品は、その価値を高めるために、商品そのもの以外にも様々な演出がされています。この教材を総合的な学習の時間で行う場合は、メディアのめを視聴した後に、実際のCMを分析するといいでしょう。CMに使われている音楽、タレント、撮影された場所などを書き出していくことで、どの年代にどのような印象を与えたいのか、CMの構成が見えてきます。総合的な学習の時間で学校紹介のCMづくりなどを作成する際に効果的な教材です。
第11回の「知ってる?ニュース番組の裏舞台」では、テレビニュースのラインナップは送り手の考える重要度と受け手のニーズによって決められていることを取り扱っています。5年生社会科の情報社会の単元では、情報を伝える人の努力や工夫を子ども達に考えさせることができるでしょう。国語では作文やスピーチの構成を考える時にも活用できます。「何をどんな順番で書いたらいいかが分からない」という子どももいます。自分の考える重要度と伝える相手のことを考えることで、優先順位を決めることができると思います。また、番組ではテレビ局によって同じ時間帯なのに違うニュースを取り扱っているシーンがあります。ニュース番組と一括りにすると同じことを伝えているように感じますが、各局の考えるラインナップは当然違うわけです。同じメディアでも伝える人が変わると内容も変わるということを理解させると、調べ学習では似たタイトルの本を複数借りて分析する児童も出てきます。調べ学習をする際にも有効な教材になっています。
子どもも保護者も先生も、メディアについて考えなければならない時代です
学校ではよくテレビの視聴時間について指導されますが、メディアとの付き合い方を「時間」だけを言及するのは効果的とは言えません。その他のメディアについても同じ事が言えるでしょう。そこからもう一歩踏み込んで、メディアがどのように構成されているのか、ということを「メディアのめ」を活用して子ども達と一緒に考えてみましょう。
また、中学生になるとメディア接触はさらに増えていきます。自分専用のスマートフォンを持つ生徒も多くなってきます。携帯電話各社はフィーチャーフォンの販売を打ち切り、スマートフォンへと一本化すれば、やがてみんなが普通にスマートフォンを持つようになるでしょう。自由に使えるメディアを子ども達が手にする前に、インターネットやケータイについて、クラスで、学校で、そして家庭で、みんなでじっくりと話し合って使い方、つきあい方を考える時間が必要です。メディアのめは、そのきっかけを作ってくれる番組です。
・NHKテキスト「学校放送」(4年~6年)24年度3学期「メディアのめ」番組委員からのメッセージ
・NHKテキスト「学校放送」(4年~6年)25年度2学期「メディアのめ」番組委員からのメッセージ を編集して書き出しました。
NHK Eテレ「メディアのめ」番組委員
東京都北区立豊川小学校教諭 佐藤 和紀