司書研修の報告

司書研修の報告

No.2 学校司書研修2017年7月

2018-02-15 15:41 | by 井谷(主担) |

平成29年度 中堅司書研修
1日目

平成29727日(木)10時~16 

東京学芸大学附属世田谷小学校 メディアルーム (参加者 51名)                     
□プログラム
2017年度学校司書研修7月.docx

1-A 図書館概論 

● 「図書館の歴史と使命」       講師:東京学芸大学 山口源治郎氏


 講義は1953
年刊行のR.ブッラドベリ著『華氏451度』から始まった。これは読書と本の所有を禁じる社会を描いたSF小説であるが、それは決して本の中の絵空事ではない。人類は、古代中国の焚書坑儒の時代からずっと焚書・禁書の歴史を繰り返してきた。今日の「図書館の自由」は、自動的に与えられたものではなく、戦い、勝ち取ってきたものなのである。

 近代図書館は、国家と民衆という二つの側から組織化されてきた。日本でも自由民権運動、青年団、子ども文庫など、本を読みたいと願う人々が読書を共同化する動きも盛んにおこなわれたが、それよりもさらに国家からの動きの方が強かった。それは明治以降急激に「日本」の国民という意識を根付かせコントロールしようとしたからである。戦前戦中の検閲に加え、教育界には長い間教科書以外の読書への不信まであり、戦後も学習指導要領による拘束など国家が教育に関与しようとしてきている。委託による図書館専門職員の不在も、図書館の自律性を弱めている大きな要因となっている。

様々な問題はあるが、現在の学校図書館は、生徒一人一人の学びのプロセスや考えることを保障し、一人でも居ることのできる「居場所」を提供する空間として、大きな可能性を持っている。


4-B 情報サービス論/利用者ガイダンス論

「学校図書館でのレファレンスとは」              講師:杉並区立中央図書館 佐川祐子氏


 

レファレンスサービスとは、情報を求める利用者への図書館員による人的援助と諸業務のことで、その中には、ふさわしい参考図書を購入することも含まれる。レファレンスで大切なことは質問者へ十分なインタビューをおこなうことで、質問の動機や出所、すでに知っていること、どんな回答が必要かまでよく聞く必要がある。そのうえで、調査し回答するが、学校図書館ではさらにその回答で満足したのか直接生徒に確認して評価することができるということが、公共図書館との違いである。調査には、百科事典や理科年表、国勢図会などの書籍資料のほか、国立国会図書館サーチや都立図書館のデータベース、近隣の公立図書館のホームページなど、すでにあるものを上手に利用することが大切である。また、すべてを学校図書館で解決しようとは思わず、公共図書館への橋渡しを促すという役目も留意したい。

そのような話を伺った後、45人のグループに分かれ、実際に世田谷小学校図書館の蔵書を使って、いくつかの課題の探索活動を行った。回答例を伺った後には、各グループで情報交流を行った。
(文責:東京学芸大学附属小金井中学校 井谷由紀)

2日目

□平成29728日(金)10時~16時 

□東京学芸大学附属世田谷小学校 メディアルーム (参加者 51 名)


2-B 図書館情報資源概論
●「本を選ぶ・本を手わたす」―東京子ども図書館「本の会」の取組みを中心に
                                                              講師:東京子ども図書館 護得久えみ子氏

 前半では東京子ども図書館のこれまでの歴史と、児童室を利用する子どもたちへの職員の接し方について紹介があった。児童室では電算化はされておらず、職員が手書きの登録カードを元に子どもたちの名前を覚え、一人一人の興味の持ち方を把握しながらその子に見合った本を紹介している。

 児童室に置く資料は、18 人程で組織された「本の会」で選書をおこなっている。メンバーは東京子ども図書館の職員に加え、元公共図書館の児童室担当者や文庫主催者もボランティアで加わっている。選書は児童サービスの質を決定する重要な仕事であり、児童室に置く資料は検討を重ね丁寧に選んでいる。隔週でおこなっている選書会議では、メンバーが割り当てられた本を各ジャンル別にレビュースリップを記入し、それを元に話しあい、会議での意見や評価もあわせてシートに記録し、保存をしている。その際の評価レベルは4つに分類される。

A.蔵書の核となる基本書
B.多少の欠点はあるが長所が勝る作品

C.欠点もあるが類書がなく、読書が苦手な子どもが挑戦できる作品
D.欠点が多く対象外または大学生以上でなければ読めない
作品。
目をとおしている作品数は、一年間に出版される児童書の約
8割である。 現在、基本蔵書目録が2冊発行(『絵本の庭へ』『物語の森へ』)され、今後ノンフィクションの目録を3年後の刊行を目途に準備をしている。



2-C 情報資源組織論
●ワークショップ「図書館紹介動画をつくろう」 

                                        講師:附属世田谷小学校 司書教諭河野広和先生

 現代では、子どもたちはたとえテレビを見なくてもインターネットの動画を見ることができる時代となった。一方で膨大な情報に接する機会が増え、学校図書館で司書が選書をして「選ぶ」ということをするように、学校でもどのようにICTを使い、見せていくかは大切なことである。

 動画を作成する際の手順としては、①誰がどうなってほしいか作成の目的を決める、②取材をする、③編集をする、④公開し評価を得る。

<ワークショップの流れ>

 附属世田谷小学校の金澤司書の事例「3年生の国語単元から自分で調べたい昆虫を探す」という12枚の写真を元に、河野先生から動画への取り込み作業や文字入れなど手順を解説してもらった。

その後、各グループのipad1台を用い、館内の写真や動画をiムービーで撮影し、1分の紹介動画を作成する。その際、見た人が誰を対象に、何を目的で作成したのかがわかるようテーマを設定してつくる。各班で作成後、発表をおこないそれぞれの作品に対して河野先生から講評を受けた。
(文責:東京学芸大学附属国際中等教育学校 渡辺有理子)



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 









































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