今月の学校図書館

こんなことをやっています!

新学期の準備 ~長期休みにはこんなことをしています!(春休み編)

2019-04-10 16:27 | by 村上 |

 4月になり、令和の時代がスタートする前に、すでに学校は平成31年度が始まりました。学校図書館も、新入生を迎えて慌ただしくも、活気ある日々を迎えていることと思います。3月は異動の時期。2校兼務の学校司書さんが、2校とも異動の辞令をもらった話や、5年の任期を終えて再試験を受け、新たな学校に異動になった話も聞いています。異動がなくても、長期休みは雇用されないため、新学期になにもかも一気にこなすという学校司書さんもいらっしゃることでしょう。本来、この仕事は長期休みの雇用が保証されるべき仕事だと思います。今月は、本校の図書館で春休みに行っているあれこれを紹介します。


   春休みは貸出はしないという学校が多いようですが、本校では借りていた資料を全部返した生徒には、春休みも貸出をしています。あまり宿題のない時期なので、ゆっくり本が読めるのでは、ということもありますが、蔵書点検をするので、冊数が少しでも減ったほうが楽というこちらの都合もあります。

 今年は、3月末に、卒業した3年生有志が5人、クラブ活動日には、1、2年生の図書委員が点検作業を手伝ってくれました。同じ管理ソフトを使っている学校が、附属内に複数校あるので、蔵書点検キットを借りられるというのも、ありがたいです。蔵書点検は毎年必ず…とは言えないのですが、春休みにはできるだけ行うようにしています。全部の類が無理なら、たとえば今年は9類だけ…というように限定して行っています。
 
 狭い図書館なので、蔵書点検をしながら、除籍作業もしています。除籍をする基準は、
 ・ほとんど利用されていない
 ・内容が古くなっている
 ・類書がすでにある
 ・痛みが激しい
などですが、除籍はいつも悩みながらの作業です。ほとんど利用されていない理由として、旬を過ぎてしまった、中学生には難しすぎた、中学生の関心を得られなかった、などがあります。旬が過ぎたものは除籍する事も多いのですが、残り二つは判断に迷います。棚全体を眺めながら、時には先生や生徒の意見も聞きながら、決めていきます。場所をとる単行本を除籍する場合もあります。たとえば、『ドリームバスターズ』シリーズ(宮部みゆき著)は、文庫本が購入してあるので、後ろ髪をひかれながら単行本は除籍することにしました。写真は、誰かにひきとってもらいたいなと、図書館前に儲けたリサイクルコーナーです。「除籍される本に愛の手を!」とキャッチコピーをつけて並べてみました。ひと昔前、読書家の女の子にリクエストされて購入した当時のベストセラー『蔵」(宮尾登美子著)は、何年も誰にも借りられていません。もう少し上の世代なら読んでくれそうなこれらの本をどこか一堂に集めて、提供できる場所があるといいなと、この時期はいつも思います。

 棚がギチギチだと生徒は本を適当に戻しがちです。図書館は蔵書がたくさんあればいい…とは限らないのだと、この仕事をしていると思います。ましてや、今はデジタル情報も手に入りやすい時代です。紙媒体の本ならではの魅力を伝えられる場所として、蔵書構築は学校司書の大切な仕事だと思っています。

 蔵書点検をしながら見直すのは、レイアウトです。思い切った変更はしないのですが、今回はシリーズもののライトノベルがいつのまにか増えたこともあり、とうとう近代文学作品だけを集めた棚をつくりました。また、913の日本文学の棚も増えてしまったため、続けて並べていた914のエッセイを、別の本棚に取り出しました。

 長い間、YAコーナーと銘打ってカウンター前に別置していた中高生が主人公の作品を主に書いている作家さんのコーナーを解体し、著者順に並んだ書架に戻しました。かわりに散らばっていたマンガを集め、さらにボロボロになり除籍したままだった『ドラゴンボール』を買い直しました。そこで、館内見取り図を書いてくださっている村田さん(卒業生の保護者で、ガクモの生みの親です!)にお願いして、春休み中に修正をしていただきました。そのついでに、オリエンテーションで使えるように、類の数字を抜いた見取り図も作っていただきました。近々行うオリエンテーションでは、1年生に館内を自由に探索してもらいながら、類の場所を覚えて書き込んでもらおうと思っています。また、リニューアルした館内見取り図は、厚紙に印刷して1年生全員に渡し、情報ファイルにとじ込んでもらうことにしました。

 蔵書点検は、1年間一度も誰にも触られなかった本も、埃だけは払われ、点検のために倒した本を戻すことで、こんな本もあったなぁと記憶を新たにさせてくれます。そして、一見単調なこの作業が、本好きな子たちは決して嫌いではないというのも面白いです。なによりこうした裏方作業をすると、より図書館に愛着をもってくれるような気がします。

 蔵書点検の合間に行っているのが、昨年度の活動のまとめです。私は教員の会議には出ていないため、活動のまとめを会議で配布してもらっています。昨年の貸出統計を出し、1年間の授業実数と内容を一覧にします。運営方針や、選書方針、学校司書の仕事、授業での支援方法、契約している有料データベースなどはほぼ変わらないので、昨年の報告書をもとに、今年度バージョンに変えていきます。(新たに赴任した先生には、個別にオリエンテーションをさせていただくことにしています。)

 1年間仕事をしながら肌で感じていたことが、数値化するとより明らかになるという利点があります。本校の場合は、貸出冊数の減少が如実です。利用者自体が減っている気はしないのですが、図書館に来ても本は借りない…という生徒が多いように思います。読書が娯楽のひとつに過ぎない場合、他に楽しいことがあれば、借りてまでして本は読まない…という中学生に向けて、読み続けることの意味をどう見出してもらうかは、大きな課題です。学校司書ひとりで解決できることではないので、そこは先生方と一緒に、学びの過程に、「読む」活動を取り入れていきたいと思っています。

 活動報告には、このデータベースのことももちろん書きます。今年度も文科省事業を受諾し、さらに研究指定校になっているので、研究授業を引き受けてくださった先生だけでなく、様々な教科での活用をぜひ!と書き加えました。活動報告には紙面の都合で掲載しませんでしたが、昨年度の貸出ベスト100を打ち出し、シリーズ本はまとめて表示して、一覧にしたものを図書館の外に掲示しました。

 春休み中は、学校に出てきている先生がたとも、来年度の話ができる余裕があります。今回は、保健体育、音楽、英語、国語、数学、社会の先生と話ができました。細かいところまでは詰めませんが、ざっくりと話をすることで、方向性が見えてきます。 

 新学期に向けて新たなコーナーづくりもしなくては、と思っているうちに、あっという間に始業式を迎えました。左の写真は、本校の校長先生が、始業式に生徒に紹介した書です。書道が専門の校長先生は、昨年も、全校集会時に一文字書かれて、それを見せながら、その文字にまつわるお話をしてくださることがよくありました。あの書をいただいて図書館に掲示したい…そう思い、年度末にお願いしてみたところ、快諾していただけたのです。そこで、始業式終了後、校長先生からいただいた書を、図書館に飾ってみました。この日の文字は、「令和」の和です。漢和辞典や書の本も並べ、校長先生のお話を聞いた生徒の感想も貼ってみました。今年は、数学の先生にも、月替りでオススメの数学の本を紹介してもらう予定です。

 結局、春休み期間だけでは新学期の準備は終わらず、新入生の登録や進級処理、個人カードの作成、オリエンテーション資料の印刷等は、新学期にずれこみましたが、なんとか間に合いそうです。展示コーナーには、本屋さん大賞を受賞した瀬尾まい子さんの著書を並べました。新1年生も休み時間に図書館を覗きに来たり、「図書委員になりました!」と挨拶に来てくれたり。リサイクルコーナーの本からも何冊か持ち帰られた痕跡が…。数年ぶりで入れた『ドラゴンボール」には3年男子に人気です。今年は、新たに赴任された司書教諭の先生からも刺激を受けて、学校図書館をよりよい場にしていきたいと思っています。

 春休みだからこそできることは、このように多岐に渡ります。児童・生徒が学校に来ている時間だけの雇用では、バックヤードの仕事ができません。オーバーワークが当たり前のような学校司書の現場を変えていくにはどうしたらいいか…は私たちの大きな課題です。

 東京学芸大学附属世田谷中学校司書 村上恭子

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