授業と学校図書館

授業で役立つ活用事例を「先生のひとこと」として紹介します。

先生のひとこと

リニューアルから指導が始まる!  札幌市立中学校訪問記を受けて

2014-08-24 19:03 | by 中山(主担) |

―司書教諭奮闘記―

札幌市立宮の丘中学校 司書教諭 佐藤敬子 

1,はじめに

ひょんなことからお二人(長崎の山本みづほさん東京の有山裕美子さん)の訪問が実現して、嬉しいけれどびっくり。わざわざ長崎と東京から来ていただくなんて…と恐縮してしまいましたが、まずはありのままを見ていただこうと本校のまだまだな図書館を見ていただきました。

 そこで今度は、そこまでとそれからの「奮闘記」を…とのこと、ありのままに書こうと思います。

 

2,転勤

まず今年の3月末。顔合わせのために訪問してともに転勤する先生方と一緒に施設見学。「ここが図書館です」と言われ、ドキドキしながら入ってまず思ったのは、「息が詰まるくらい狭い!」ということ。ぐちゃぐちゃに汚いわけではないのですが、とにかく狭い。背の高い書架群が目の前に迫っていたのです。真ん中を走る高い書架群。そして暗い。よく見ると向こうにも机はあるのですが、この書架群で部屋が真っ二つに仕切られており、これでは授業はできないだろうなあという思いでした。

授業で使われなかったら「学校図書館」とは言えません。これをなんとかせねば…と赴任前から半分ワクワク、半分不安な気持ちでした。


3,そして41日、赴任。まず点検、診断。

幸い、いい本はけっこうそろっています。札幌市は「子どもの読書推進計画」の最終年度までに、全部の学校で「蔵書率100%達成を…」と予算をつけてくれていた(本当に達成までだったのですが…)ので、前任者がけっこう熱心にいい本・使えそうな本・新しい本を購入していたのです。ただ、あまりにも急激に予算が来てあまりにも一度に大量購入したため、計画的にそろえられず、購入した本をきちんと配架することもできずに並べていたようです。

見ているうち、「こうやって、こうやって…」と思うともう、いつの間にか動いている私。写真を撮る暇もなく、少しずつ本や書架を動かしていました。なんとしても5月くらいまでには…と思うのです。

これでリニューアルは4校目ですが、直近の2校は5月には開館しています。本校でも担当の3学年の他に1学年の国語も担当することになり、1学年教科書の最初の方に載っているNDCの指導を早くしないといけない!という使命感もありました。いまやらねば!という切羽詰まった気持ち、早く何とかしたいという願望…。焦りにも似た思いでした。

まずは点検。どこをどうしたらこの真ん中の背の高い書架群を動かせるか、夢の中でも考えました。不可能な気もしたのですが、これをどうにかしないと、とにかくこの部屋が使えません。1クラス入らないのです。そこで1つずつの書架を単位に考え、上下に分解出来るものは上下に分解して組み直そうと考えました。

まず真ん中の書架の中の本を片端から抜き出して机の上に背が見えるように並べます。昨年度1年間だけいた前任校(ここでもまず改造しました)では、まだ広さがあったのですが、ここは狭いのでぎゅうぎゅう。廃棄すべき「地獄行き」(廃棄候補をこう呼びます。残すものは「天国行き」です。)はもちろん段ボールに詰めます。置き場所を工夫したり、文庫本はとりあえず段ボールに詰めたり…。ただ、とにかく場所がないので、隣の司書室へ運ぼうと思うのですが、すでに前年度、廃棄候補にしたもの(100%達成までは捨てないでくれといわれて捨てられなかったようです。どこでも似たような話を聞きますね)が積み上げられていたり、いらないものがたくさんあったり…。どうやらホコリがひどいので数十年間手をつけなかった様子。しかしここのゴミを解消しなければ整理出来ません。

そこで今度は司書室のものの片付けも並行して行うことに。あっちこっちで頭がバラバラになりそうでした。

 

4,いろいろな方の手を借りて

「古い冷蔵庫はいりませんか?」「かなり草臥れ(て、たぶんダニのすみかになっ)ているソファはいりませんか?」「古いポットはいりませんか?」…等々と、毎朝の打ち合わせで私が声をかけるので、先生方も「次は何が…?」と注目していたようです。

朝の打ち合わせ以外にも、ことあるごとに職員向け司書教諭だよりを発行し、現在の図書館診断からリニューアルの是非、進捗状況など、いろいろ書いて呼びかけていました。早速、「待っていました!」とばかりに授業での図書や辞典の活用を考える先生や、段ボール箱を大量提供してくれる先生、「どれどれ…」と見に来てちょっと運んで手伝ってくれる先生・・・など、先生方にずいぶん関心を持ってもらえました。学校中の掲示物を新しくきれいにしていた文化係の先生などは、図書館入口の大きな看板を作って下さいました。

用務員さん方もよく見に来て下さり、書架を動かしたりものを運んだりして下さいました。あるときなど、司書室に入ったとたん1人の用務員さんが「ここは咳が出るよ!先生、窓開けなさい、アレルギーになるよ!」と叫び、数分後にはカビやダニの温床になっていたカーペットはゴミ置き場へ。大きなソファ(やはり引き取り手がいなかった)もゴミ置き場へ。なぜか2台もあった古い給食配膳台や古いテレビ台も、サッサと持って行って下さいました。これらも朝打ちでききましたが、やはりもらい手はなかったのです。極めつけは閲覧室内の大きなカウンター。床から根が生えているような木製の大きなもので、貸し出し等はコンピュータでしているため特に用はないのです。これも思い切って捨てることにし、用務員さん方がのこぎりで切って運んで下さいました。また、一角にあって開かない掃除用具入れも床から切り取って処分。「いや~、校内でチェンソー使ったのは初めてだよ~。」と笑顔で処分して下さいました。また、入口上部の欄間ガラスには色褪せた色画用紙がびっしり貼ってあった(なぜかわからないのですが、中が見えないようにしたのでしょうか??)のですが、それをすっかりはがし、貼り跡も残らないようにピカピカに磨いて下さったのです。

こうしていろいろな方のおかげで司書室や閲覧室が少しずつ広くきれいになっていきました。

さて、一番の問題の、閲覧室真ん中の書架群はどうしたか?

まず、壁の古い書架を1つ整理して廊下に出し、かばんなど入館者の物入れにしました。別の壁書架も1つ整理して司書室へ運び、捨てるにはちょっと惜しい古い本や職員向けの本、集団で使う辞書等を入れました。少しずつ空いていく壁際に、さらに真ん中の書架群からひとつ、またひとつ、と運びます。広い窓下へも上下分解したものを並べたり、参考図書コーナー作りのために端にいくつか持って行ってコーナーとして固めたり・・・。私がウンウンいいながら1人で動かそうとしているのを見ると、必ずと言っていいほど近くの方が手伝って下さるもありがたいことでした。そうこうするうちに、ついに真ん中の書架群が全部消えたとき、まさに「やった~!」という思いでした。一緒に動かして下さっていた用務員さん方も大喜びです。

片隅で古い本を死蔵していた雑誌架も、廊下に出してパンフレットやリーフレット用に。司書室にあった折りたたみ机なども新聞展示台として廊下へ。本校の廊下やちょっとしたホールは広いので使わない手はないのです。

また、ボランティアさんも、以前からの方が1人、それから新しく来て下さった方がお1人。お2人とも司書諭の資格を持っている方です。途中からの参加ですが、早速大きな力になって下さいました。

 

5,生徒の手ももちろん!

こんなふうにいろいろ改造している最中にももちろん、図書局員たちを中心にその友達や部活動の生徒たちなど、いろんな生徒が昼休みや放課後に来てくれ、どんどん出したり並べたり。

「何かお手伝い出来ることはないですか?」という声がとても嬉しかったものです。生徒もどんどん変わっていくのが面白かったのでしょう。早く開かないかなあ…という思いもあったようです。

生徒に向けても司書教諭だより「こんにちは、司書教諭です!」を何号か出して進捗状況を知らせていましたし、423日からの「こどもの読書週間」には寄託図書を活用した貸し出しを図書館入口でしていましたから、かなり興味を持ってくれていたようです。
  
こんにちは!司書教諭です。 No_3.jtd 

 

6,どうして比較的早く大改造ができるのか?

とにかく、決して自分1人でできるものではありませんでした。いろいろな方の協力があってこそ、改造はできるものなのです。

また、モノとしては軍手とエプロンは必携でした。エプロンはホコリで真っ白になり、よれよれになったのですが、それを公表したところ、遠くから送って下さった方もいて、本当にありがたいことでした。

 

じつは新しいボランティアさんはこの3月まで現場にいた、もと同僚。北海道SLAの仲間です。ある日、「敬子先生って人を巻き込むのが上手ですよね。前から思ってたんですよ。どうしてなんだろう?」というので、2人でその理由をいろいろ話していました。そこで得た結論。…私は背が低いので、小さい頃からすぐ人に上のものをとってもらっていました。背伸びをしても無理なものは無理。だからこそできる人に助けを求めていたのです。その精神でいるからこそ、皆が手伝ってくれるのではないか。できないからすぐ人に助けを求める…この軟弱な発想こそ、周りを巻き込むことの極意なのではないか…そう結論づけて2人で笑いました。   

しかし、本当にこれが「最初の一歩」なのかもしれません。できないものはできないのだから、1人だけで頑張らないで、騒いで知らせて助力を求める…これが大事なのです。だって学校図書館は私のものではありません。学校にいるみんなのものなのですから…。

そして同時に、自分がどんなに大変でも、情報の発信は重要だと思います。今何をしているのか、どうしたいのか、とにかく知らせて情報を分かち合うこと。そして助力を求めて達成できたらその喜びも分かち合うことです。

 

7,改造はまだまだ続く・・・

さて、ある程度NDC通りに図書の配架が進んできたところで、徹底的にサインをつけました。NDCを指導するにはこれをきちんとしなければなりません。以前から十進分類のサインはあったので書架の上に乗せましたが、それだけでは不足。そこで以前から家で使っているサプリの箱を裏返しにして△の立体を作り、それにNDCを貼る作戦。これは以前からやっている廃物利用です。

とにかく至る所に置きました。さらに事務官に頼んで用品庫から出してもらった厚紙にNDCを貼り付け、分類の変わり目に挟んでいきます。この細かいサイン付けは現在も継続中です。

事務官にお願いして購入した回転書架には文庫本を入れてまたサイン付け。

また、児童用の百科事典を購入したらおまけでついてきたブックトラックと、新たに購入してもらったブックトラックとで2台。図書の移動や整理に大いに役立っています。

さらに現在は分類のおかしな本の直しや破損本の修理、細かい配架替えなど、ボランティアさんと協働しながら少しずつ進行しています。コーナー作りや館内外の装飾・表示等、きりがありません。
      こんにちは!司書教諭です。 No_4.jtd

 

8,その後、図書館をどう活用しているか。

最初の利用者は大学を出たばかりの社会科の先生。司書教諭資格も持っているとのことで、教材研究のために参考図書を…とまだほとんど何もしていない43日、探して借りていかれました。こういう利用者のためにも早くなんとかしなくちゃ!と励みになったものです。続いて英和・和英辞典。英語科の先生が「待ってました!」とばかりにいらっしゃり、存在を確認して嬉しそうに「ちゃんとあるのね~」と、別の部屋へ運んでいって使うことに。場所も空いて一石二鳥です。

 

さて、いつから開館出来るかわからず夢中で改造していて、やっと開館出来る、というときのことです。ハッとしました。改造に夢中で、生徒に対して何も指導を考えていないことにはたと気づいたのです。

確かに司書教諭だよりはすぐに作れますし、それだけでもいいのですが、発寒中のときのように「図書館学活」も準備していません。どうしよう…と考えたとき、その前の陵北中学校で、総合として毎朝カウントして実施していた朝の十分間ずつの「学び方の指導」(1週間でちょうど1時間分となる)を思い出しました。そうだ!朝の読書の時間を使えないか、お願いしてみよう。そう思ってまず司書教諭だよりだけは作っていき、朝すぐに全校生徒分を印刷。そしてダメ元でまず教頭先生や教務の先生に。すると「いいんじゃないですか、皆さんがいいと言ったら…。」というじつに寛大なお返事。すぐに朝の打ち合わせでお願いしてみたところ、誰も異議を唱えず、OKが出たのです!そこで、その日の朝読書の時間(朝の短学活後の10分間)からすぐに司書教諭だよりと放送を使って(実質は新しい先生の紹介等もあって5分間くらい)「学び方の指導」が1週間継続して始まりました。

内容は、まず・・・

1,図書館の使い方について。2、図書館の配架とNDC。3,その確かめでクイズに挑戦。4,参考図書の紹介といろいろな参考図書。5,その確かめでクイズに挑戦。

・・・というものでした。ごくごく初歩ながら、学び方の指導(利用指導)ができたのです。使用するものは司書教諭だよりと放送のみ。本当に自分でも思ってもいなかった展開でした。それなのに効果は絶大。何よりも、生徒から「これでどこに何があるかわかるようになった」という声が聞こえてきたり、先生方も「面白かった、よくわかった」と言って下さったり、保護者からも「楽しそうな司書教諭だより、いつも楽しみにしています。」と言っていただけたりしました。

そしてこんなとっさの思いつきに対応してくれる学校の柔軟性が何よりも嬉しかったのです。

 

その後、1年国語科でまず私が「MY FAVORITES」。私がやって見せて同じく1年国語科を持っている他の先生がTTや単独で実践。するとそれを見ていた2年国語科の先生も。2年生にも同じようにまず私がやって見せ、あとはTTやその先生が自分で・・・とどんどん拡大しました。
  
MyFavorites.jtd

さらに研修会で少しだけお話ししたら、総合の調べ学習に早くから参考になる本を本校図書館で調べていた、2年総合担当の先生が、寄託図書も含めて使いたいとのこと。本校の図書と併せて2学年が1~2学期にかけて職業調べをしています。この寄託図書、もちろん自分でも夏休み長期貸し出しの際に図書館前で貸し出したり、所属する3年生の修学旅行の調べ物(総合)用に貸し出したり。ただ、その際に3学年にも少々調べ物のコツ等を指導してみましたが、やはりいきなりでは定着しないようで、改めて1学年からの系統的な学び方の指導(利用指導)の大切さを感じています。

とりあえず、1学期としてはこんなところでしょうか・・・。

 

9,さて、これから・・・

これから2学期、まず国語科の研究授業を引き受けました。1学年で学び方の指導の授業にするつもりで、情報カードを使ったものにしようかなあ…と考えています。ここで公開して、全校の先生方にも見ていただき、まず知ってもらうつもりです。

そしてさらにいろいろな教科に働きかけてとりあえずは学び方の指導なり資料活用なりの実践をしてもらい、年度末にまとめ、来年度は前任校のように体系的な計画も作れたらいいなあと考えています。1学期は流石に疲れたので、どこまでできるかわかりませんが、やれるだけ頑張ってみようかな…と、この夏休みにまた妄想している自分が怖い…。


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