今月の学校図書館

こんなことをやっています!

八王子学校図書館サポートセンター

2024-07-03 14:53 | by 金澤 |

 今月は、八王子市学校教育部教育指導課主査の奈良了さんに八王子市学校図書館サポートセンターの取組を紹介していただきました。

◆はじめに

  八王子市は人口56万人、市立小学校69校、中学校37校、義務教育学校1校を有する中核市です。現在、学校司書は27名おり、1名が4校を受け持つ形で全学校をカバーしています。学校司書の配置は平成24年から徐々に始まり、平成28年には現在の27名が全校をカバーする形になりました。学校図書館サポートセンターは、全校配置の1年前、平成27年に設置され、それ以来、様々な面から学校図書館・学校司書を支援しています。

 

◆サポートセンターは何をしているの?

 学校図書館を支援する組織は既に様々な自治体に置かれており、様々な活動をしています。大きく分けて、公立図書館部門に置かれている場合と、学校教育部門に置かれている場合の2つがあるようです。本市の場合は後者にあたり、学校教育部教育指導課内に置かれています。業務としては、学校図書館を支援する業務一般となっていますが、特に教育指導課に置かれているという点を活かして、学校の授業支援に力を入れています。とはいっても、直接サポートセンターが授業支援をしている訳ではなく、授業支援をする学校司書の支援を行うのがメインとなっています。その活動は多岐にわたるので、いくつか特色があるものをご紹介したいと思います。

◆資料・機材の貸出

 事の事の発端はコロナ禍の2020年まで遡ります。
全国どこもそうだったと思いますが、コロナウイルス感染症の対策として様々な対策が取られる中で、「ソーシャルディスタンス」というのがありました。人が集まるのはダメという中で、「調べ学習がピンチ」という学校司書の報告(相談?)がありました。一冊の本をみんなで顔を突き合わせて読むのがダメということで、学校に1~2セットしかない高価な子ども用百科事典を使って、みんなで調べ学習ができなくなってしまったという話でした。授業のときだけ他の学校から借りて数を確保している学校もありましたが、どこの学校も1~2セットしか持っていないため、数を揃えるのも大変苦労していました。そこで、図書館振興財団の助成金を申請し、サポートセンターで百科事典を6セット購入し、学校への貸出を開始しました。学校は高価な百科事典セットを複数買わなくても、必要な時だけ使えるので◎、サポートセンターも次々に学校に貸し出すことができ、投資に見合った高稼働を確保できるので◎といった風に、双方がWinWinの取り組みとなりました。


 唯一の欠点は、百科事典セットが非常に重たいので、運ぶのが大変という点ですが…他にも、同一の郷土資料50冊、蔵書点検機器用のバーコードリーダー多数、紙芝居やビックブックなど、一つの学校では年に数回しか使わないものを多くの学校へ貸し出しすることで、学校にとっては便利かつ、機材の高稼働による有効活用を図っています。

 

◆情報の共有


 本市では、年に10回程度の学校司書連絡会を実施しています。学校司書の勤務日数が年間192日なので、出勤日の約5%が連絡会にあてられています。これは結構日数としては多いのではないかと思っています。司書連絡会では外部講師を招いた研修を実施することもありますが、多くの時間は学校司書の情報共有の場としています。学校司書が自校の事例を発表したり、学校司書が少人数のグループに分かれて様々なテーマについて研究する部会活動などを行っています。


 サポートセンターは、この連絡会の企画・運営を行っています。年度当初に学校に一年間の連絡会スケジュールを提示することによって、学校司書が連絡会に参加しやすいように配慮しています。また、平成31年度に全校をネットワークでつないだ学校図書館システムが導入されると、パソコンを介した資料データのやり取りができるようになり、情報共有が一層進みました。というと、サポートセンターの出番が無いように思えますが、ネットワーク上の情報交換用フォルダの設定、情報提供の呼びかけや取りまとめなど、サポートセンターがいわば「世話人」のようになることで円滑に情報共有が図れるようになりました。

 

 

◆GIGAスクールへの取り組み


 こちらも2020年になりますが、全国的にGIGAスクール構想への取り組みが一気に加速しました。コロナ禍で学校の教育活動が変化している中でのGIGAスクール構想ということで、各校の学校司書からは不安や困惑の声が出始めていました。実際、一人一台端末の配備により調べ学習がインターネット利用中心となり、学校図書館の利用が減少しているという声も聞かれました。


 そんな中で、サポートセンターは学校図書館と一人一台端末の新しい関係を作るため、「学校図書館サイト」を企画しました。簡単に言ってしまえば「学校図書館の情報ホームページ」になります。それまでに学校や学校司書が作成していた情報をデジタル化して掲載することにより、高い検索性を確保しつつ、正確性の高い情報を公開しました。当然、情報量としてはインターネット検索とは比較にならないくらい少ないのですが、学校の学習内容に沿った情報を載せることで、一定のニーズを満たすことができるようになっています。


 また、資料についても概要版にとどめ、出典を記載することにより、図書による学びへの手助けとしての役割を持たせています。


 その後、コンテンツを増やしていき、現在では自校の学校図書館の蔵書が検索できる機能や、電子書籍へのリンク、著作権フリーの郷土学習用写真、調べ学習ガイドの掲載、調べる学習コンクールの過去入選作品の閲覧など、様々な機能が増えています。


 なお、これらは、八王子市の学習用アカウントを持っている児童・生徒・教員・教育委員会関係者だけがアクセスできるようになっているため、インターネットから見ることはできません。また、これらはGoogleサイトを活用して作成しており、サポートセンター職員による手作りの運営となっています。

           

◆サポートセンターの目指すところ


 他にも大小さまざまなことを行っていますが、支援を行うにあたって留意しているポイントは「連携」です。学校司書は1校に1名配置というのが、たぶん全国的にほとんどではないでしょうか。学校の管理職や教員など、相談できる人はいるのでしょうが、司書という専門性が高い資格を持った職員は通常は校内に1名しかおらず、自分だけで様々なことに取り組んでおり、負担は大きなものだと思います。


 また、その一方で、自分一人だけで取り組んでいるため、自分の得意なこと、不得意なことが客観的に認識できないという点もあるでしょう。我々サポートセンターは、学校司書一人ひとりへの支援はもちろんですが、「八王子の学校司書」として全員が同じ情報を共有し、ともにスキルアップしていけるように留意しています。自分の苦手なことを他の学校司書から学んだり、得意だと思っていたことでも新しい気づきができるように、そんなサポートを心がけています。


 今年は本市に学校図書館サポートセンターが設置されて10年目の節目の年となります。
現状に満足することなく、常に新しい視点を持って支援を続け、学校図書館の更なる飛躍の年にしていきたいと思います。

      (八王子市学校教育部教育指導課 主査 奈良了)


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