読書・情報リテラシー
東京都世田谷区立桜丘中学校の取り組み
2021-12-08 16:44 | by 渡辺(主担) |
「読む人権」ー本が伝えるメッセージ
教務主任(司書教諭)松尾英治 研究推進担当 太田和花奈
東京都世田谷区立桜丘中学校は、多様性を尊重した自由な校風の中で、各学年6クラス(計636人)の生徒が、学校生活を送っています。2021年9月1日から10月末まで、東京都人権プラザに、本とパラリンピック競技パネル等の出張展示を依頼し、特別展「読む人権」を実施しました。
■図書館から発信する、オリパラと多様性
本校のすぐ近くには、東京パラリンピック・オリンピックの馬術競技場となった馬事公苑があり、夏休みの課題として各学年がオリパラの調べ学習に取りくんでいました。 図書館でも関連図書を展示しましたが、貸出は少なく、多くの生徒は本よりもネットを利用していました。パラリンピックの学校連携観戦も中止となり、何か別の形でのオリパラについて情報発信できないかと模索していた折、加藤校長先生より「スポーツと人権・多様性」というテーマの投げかけがありました。さっそく学校司書が資料を探したところ、リーフレット<「多様性と調和」の実現を目指して:オリンピック・パラリンピックと人権>(東京都発行)を知り、人権プラザに相談し、学校への出張展示を快諾いただきました。桜丘中は都の人権教育推進校として、生徒の人権意識を高めることを目的に教育現場の中で様々な取り組みをしています。「不登校」「いじめ」「外国人」「障害者」「LGBTQ」もテーマとして追加し、冊数や選書を協議しながら、展示準備を進めました。
二学期になり、廊下ではパネルを、図書館内では6つの人権のテーマ*の本とリーフレットなども一緒に並べて展示が始まりました。ふだんとは違う館内の様子をぐるりと歩いて見る生徒や、まんが本を見つけて読み始める生徒など、それぞれに興味を持ったようでした。図書委員会もNIE(News Paper in Education:教育に新聞を)の活動として、展示テーマに関連した新聞記事を切り抜き、熱心にボードに掲示してくれました。
*6つの選書テーマ(人権センターパネルより)
<一人ひとりの「人権の扉」を探して>
<スポーツを通して見える世界>
<多様な性は多様な生について考えること>
<不登校は誰にでもおこりうる>
<しょうがいを理解するための子供のための選書>
<世界の違いを楽しむ本の旅へ>
■生徒参加型の展示「パネル・ギャラリーウォーク」
10月に入り、教員企画による「パネル・ギャラリーウォーク」をスタートしました。本を通して人権について生徒の興味をかき立てる仕組みづくりを心がけました。絵本やまんがなど、生徒が手に取りやすい本を廊下に展示し、朝学習の時間を使って、生徒一人ひとりが興味のあるテーマに丸いシールを貼るというスタイルは、図書館にとっても新鮮なイベントでした。生徒たちがどんな人権テーマに興味があるかを可視化することで、教員が授業やその他の教育現場にその結果を有効活用することも目的としました。どのテーマにも生徒たちは関心を寄せていましたが、特に「不登校」のボードに多くのシールが貼られました。
「私はこの本の当事者だと思う」という声や、図書だよりを見た保護者が来館するなど、展示に対してさまざまな反応がありました。校長先生からも「教員が連携し、人権をテーマにした展示を学校の中で行うことができ、一人ひとりの表現の場につながった」とのコメントがあり、「多様性を受け入れる」桜丘中らしい機会となりました。
■GIGAスクールにおける図書館の役割
今回の展示をきっかけに、より生徒の人権意識を高め、「誰もが人間らしく、自分らしく生きるためにはどうしたらいいか、どのような社会にするべきか」を考えることができる生徒を育てていきます。また生徒一人にタブレットPC一台となり、GIGAスクールが進む中で、桜丘中は先がけてBYOD(Bring Your Own Device:各自の携帯端末を活用した学習)を実践してきました。日々の教室での学習では、ICTを活用した授業が確立されています。図書館においても、メデイアセンターとしての役割を、GIGAスクールに対応するようにアップデートしていかなくてはなりません。教室での授業でICTを活用して検索したことを、図書館の本でさらに調べたり、写真や動画で記録したことを、図書館の本を参考に分析したりして、ICTと本とを活用したハイブリットな学びの場を提供し、教室と図書館をつなげる模索をしていきたいと考えています。
末尾になりましたが、今回の展示では、会期延長や設営撤収など、人権プラザ専門員の方に柔軟にご対応いただきました。改めて御礼申し上げます。
参考:東京都人権プラザ
世田谷区立桜丘中 https://school.setagaya.ed.jp/tsaka/
(文まとめ 学校司書 長嶺今日子)