読書・情報リテラシー

初めて行った司書教諭と学校司書によるオリエンテーション

2017-06-18 06:20 | by 村上 |

 今年度受諾した文科省事業は、附属世田谷中学校が研究指定校として、授業研究を行なっている。研究内容は大きく2つに絞った。ひとつは、国語科の先生に年間を通した読書課題を設けてもらい、それを可能な限り単元学習につなげてもらうこと。もうひとつが、学校図書館を使った授業で、教師が何を指導し、生徒が何を学んだかを可視化する取り組みだ。生徒の情報活用能力を育てるために、学校図書館や学校司書がどのような支援ができるかを、国語科教諭・司書教諭・学校司書で分析することが今回の目的である。  
 
 そこで、情報活用能力の育成を意識したオリエンテーションについて紹介したい。

 本校でのオリエンテーションは、例年は司書が単独で行うか、国語科の教員と一緒に行うかのどちらかだった。しかし、今年は1年生の担任でもある国語科の教員が、同じ時間帯に、情報②の授業=PCの使い方について指導する。そこで、1年の学年担当でもある司書教諭(教科=家庭科)と一緒に、オリエンテーションをするという初の試みをした。
 せっかくふたりでやるなら、何か新しいことをしたい。昨年見学した附属小金井中学校では、公開授業「情報学習のオリエンテーション」で、生徒がお題の書いてあるカードを引いて、そのお題に沿った類の違う3冊を探していた。ただ、1年生はすでにオリエンテーションは済ませていて、2時間目の情報学習として行ったものだった。そこで、本校の場合は、司書教諭が家庭科教諭であることを活かし、以下のようなオリエンテーションを行った。

① 図書館へようこそ
 ここは、例年と変わらず、最初に司書から伝えたいことをA4用紙1枚にまとめた「図書館にようこそ」を3分間で読んでもらう。短い時間でも、読む力があると役立つことを実感してもらうことと、中学生としての図書館との関わり方を意識してもらうことがねらいだ。

② 分類のしくみを伝える
 毎年、必ず伝えているのは、図書館を利用するうえで知ってほしい分類のしくみだ。小学校からずっと学校図書館を使っていているはずなので、図書館の本には分類番号がついていることは知っているが、類の内容まではなかなか把握してもらえないのが実情だ。
 今回は、「猫」をキーワードに0類から9類までの本をあらかじめ選び、プリントにし、その本の内容を紹介しながら、何類の本かをクイズ形式で書き入れてもらった。プリントには、広島県はつかいち市民図書館の擬人化キャラクターを使わせていただき、分類の説明文は本校用にアレンジさせてもらった。


③ 4人1班で、4冊の本を探す
 ここからが、今年初めて行ったことである。今回は4人1班で類の違う4冊を棚から選んでもらう課題にした。キーワードは、衣生活・食生活・住生活・消費生活の4つ。どの言葉を担当するかは、カードを引いてもらい決定。まずはワークシートに、自分が思いつく言葉を黒字で書き出す。次に班のメンバーと共有し、赤字で言葉を追加。次に生徒に持参させた家庭科の教科書の目次に注目し、さらに青字で言葉を書き足し、マッピングを完成させた。


  左の写真は、ある生徒の書いたマッピングだが、自分の興味・関心だけでなく、友達と共有することで、新たな視点を見出し、さらに教科書を使ったことで、食生活から連想される食べ物や栄養だけでなく、消費者・生産者・加工食品などにも広げていくことができた。





 次に、右側のページの分類表をみながら、書き出した言葉の内容を扱っている本が、どの類にあるかを考え、4人がそれぞれ違う棚に行って本を探して持ってくる…というのが次の課題だ。分類を意識しながら、館内を歩き、いろいろな本の存在に気づいてほしいという附属小金井中学校の実践をふまえての取り組みだ。




④ 4冊の本が揃ったら、書誌情報を書き、iPadで写真を撮り、最後に本は元の場所にもどしてもらった。生徒は本棚からいろいろな本を選びだし、160人が選んだ本はなかなかバラエティに富んでいた。





 このオリエンテーションを実施してみて、衣・食・住・消費生活というのは、生徒にとって身近な題材であり、図書館にもたくさん本があることから、グループで行うには良いテーマだったのではないかと感じた。
 6月に入り、実際に家庭科で食生活についての学習につなげることができたのもよかった。
附属世田谷中学校 司書教諭 桒原智美
              学校司書 村上恭子


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