読書・情報リテラシー
ブックトークで伝える調べ方案内
2016-09-11 09:53 | by 中山(主担) |
元 大阪府箕面市立小学校司書
東京学芸大学個人研究員 高木享子
2016年夏、日本女子大学の通信教育教育課程スクーリング科目「学習指導と学校図書館」において、ブックトーク実演をおこないました。これは、かつて大阪府箕面市の小学校に勤務していた時に、4年生におこなったものを基にしています。
百科事典の使い方を『総合百科事典ポプラディア』(ポプラ社)で学習した後、社会科で「都道府県調べ」として興味をもった事柄について他の資料にもあたって調べる、という目的をもったブックトークです。
本稿では以下の3点についてお話させていただきます。
1.このブックトークをどのようにつくったか
2.このブックトーク実践を可能にした学校図書館活用の背景
3.大学で実践するにあたっての配慮
1.このブックトークをどのようにつくったか
実践した勤務校では、当時、2年生は図鑑の使い方、4年生は百科事典の使い方の学習が定着していました。このブックトークは4年生の先生方と打ち合わせする中で依頼されました。全体計画2時間の単元の1時間目の授業の中の「5.マグロについて調べる場合、百科事典からどのように広げるかを知る」というねらいで、10分ほどの時間で行ったブックトークでした。
そこで、次の4点を意識して選書し、どう展開させていくかを考えました。
・百科事典のマグロ説明文を確認しながら、「知りたいこと」を展開していく
・「自分が調べる立場にたって資料を探す」というスタンスでおこなう
・分類ごとに本が配列されていることを認識させる
・「調べて発見する」ことの面白さを感じさせる
当日はワークシートに沿って授業が進行したので、分類への意識は高まったものと思います。
2016 BT資料 小4百科事典を開こう2009.6 .pdf 参照
紹介した本を手にとってみるなどの時間はなかったのですが、子どもたちは『魚市場』の絵の精密さに感嘆したり、後日『紹介してくれた握りずしのつくり方の載っている本を借りて、作ってみました。」と報告に来てくれた子どももいました。
この後行われた「都道府県調べ」において、子どもたちは百科事典や図書資料のほかにもインターネットも使って調べたのだが、
「県章が資料によって違う」
「百科事典には、徳島県はアカウミガメの産卵場所があると書いてあったが、インターネットでは動いている姿が見られてよくわかった」など、
資料によって情報が違っていることを情報交換したり、メディアのそれぞれの特徴を実感していたりする子どもたちもいたと、教員から伝えられました。
2.このブックトーク実践を可能にした学校図書館活用の背景
実践をした小学校は、2004年度から図書館を活用した研究授業が始まりました。
2004年度は国語科で読書指導に関する授業(1年、3年)、
2005年度は生活科(2年)と総合(5年)、
2006年度から2009年度は総合で4年、5年(2回)、6年と全学年が研究授業を経験しました。
司書も授業計画の段階から学年打ち合わせ等に参加し、調べ学習に必要な利用指導(図鑑の使い方、百科事典の種類と使い方、パスファインダーの活用法など)を担当しました。
研究授業の後に毎回研究会を持ち、全教職員で講師の方から学校図書館の役割や活用についての講義を受けました。
また、2005年度からは司書教諭と学校司書とで校内研修を企画し、参考図書の案内や調べ学習に役立つ資料の紹介、資料比較ワークショップ、図書館利用指導計画の提案等を試みました。
こうして年々少しずつ、図書館は授業で活用できる場であることが理解されていったと感じています。
今回報告した4年生の授業プランの中に、国語辞典と百科事典を見比べるというのがありましたが、これも先生方から「国語辞典の説明文と比較させよう」という提案があり、
「それならば、辞典も1種類ではなく、各班2種類ずつ用意してはどうか」と話し合って決めました。
「進んで学び、自ら求めつづける子ども」(2009年度学校教育目標・「めざす子ども像」より)を目指し、図書館を活用した授業研究も研究の柱の1つだったのですが、
授業研究に取り組む中で「多様な資料・情報から学びとる」ことの面白さを先生方も実感し、小学校の6年間を通して情報活用能力を育成してくことへの理解も深まっていったものと思います。
3.大学で実践するにあたっての配慮
【ブックトーク 「マグロ」をもっと知りたいな!】
実際に小学校4年生におこなった時とはいくつか違いがありました。
1つは、ブックトークにかける時間です。小学校の授業時間は45分。
その中で、子どもたちは百科事典・国語辞典を引きながらワークシートに書き込む。
それからブックトークを聞き、また書き込む。私に与えられた時間は10分程度。
クラスによって調べにかかる時間も異なるため、用意した本は4冊でした。これでも欲張りすぎた冊数となり、簡単な紹介に終わった本もあります。
しかし、今回は40分ほどブックトークに時間をいただきましたので、冊数を増やしました。
2つ目は、聞き手が親しみを持てる資料を意識し、本を変えたことです。
大阪の小学校では『大阪湾の生きもの図鑑』(東方出版)を紹介しましたが、今回は『東京湾の魚類』にしました。そのことによって次に紹介する本や、本と本との繋ぎの言葉などが変わりました。
3つ目は、今回は聞き手が司書教諭や教員を目指している方々であったので、「図書館にある資料体系」をより強く意識してトークしたことです。
小学生だから児童書だけを置いてあるのではなく、必要であれば一般書も蔵書としていることを知っていただきたいと思いました。
また、「知りたいこと」がそのものズバリで載っている本だけではなく、同じ分類の棚でふと見つけた本の中に新しい発見や次につながる疑問を感じる情報に出会う面白さ。また、『いきいきマグロで手巻きずし』や『魚市場』のように出版年が古くても構成や文章が小学生に分かりやすいもの、あるいは芸術的にも評価できる本を伝えたいとの思いもありました。
受講生からは「本の選び方や話の流れのつくり方について」の質問や「『生き生きマグロで手巻きずし』の編集や文章が小学生にわかりやすいと思った」「築地市場の問題を考えさせられた、本を買います。」との感想をいただきました。
2016年9月21日
マグロや魚市場など、現在、東京都で話題になっている築地市場の移転問題が連想され、図らずもタイムリーな話題となりました。 (編集部)
『築地市場―絵で見る魚市場の一日』 モリナガヨウ著 小峰書店 2015