読書・情報リテラシー
Wikipedia Town in 下田小学校&白浜小学校
2017-11-25 12:21 | by 村上 |
2017年6月には、公共図書館による高等学校でのウィキペディアタウンの取り組みをご紹介しましたが、今回は11月3日に開催された「Wikipedia Town in 下田小学校&白浜小学校」の模様を、企画された静岡県地域情報化コーディネーター 市川博之氏に執筆いただきました。誰もが発信者になれる今だからこそ、自分が発信する情報に責任を持たなくてはならないことを、身を持って体験できる貴重な機会になっていることが伝わってきます。「図書館で調べ物ができるようになりましょう!」と子供達に呼びかけてくださっていることも、司書としては嬉しいことです。今後の展開を私たちも応援したいです。(編集部)
静岡県賀茂郡下田市では、情報リテラシーを高めながら、地域の歴史の保存・発信を授業で取り組むため、小中学生の地域学習計画にWikipediaTownを活用し、授業への導入検討に向けたモデル事業として「ウィキペディアタウンin賀茂地域」を開催しました。初回は、11/3に静岡県賀茂郡下田市立小学校で、「下田市立下田小学校」「下田市立白浜小学校」の2つの記事を作成しました。
静岡県賀茂郡下田市では、情報リテラシーを高めながら、地域の歴史の保存・発信を授業で取り組むため、小中学生の地域学習計画にWikipediaTownを活用し、授業への導入検討に向けたモデル事業として「ウィキペディアタウンin賀茂地域」を開催しました。初回は、11/3に静岡県賀茂郡下田市立小学校で、「下田市立下田小学校」「下田市立白浜小学校」の2つの記事を作成しました。
1、背景
・取り組みの経緯
賀茂郡では、ICT企業が非常に少なく、地元でオープンデータやICT利活用を考えようとしても、なかなかできない状態でした。また、転出数の増加により、情報を残していかないと、紙資料やシルバー世代の記憶の中にある情報が失うリスクや、学校の統廃合により建物自体も失う可能性がありました。
当時、沼津市の市民団体Code for Numazuで、沼津市にある古墳の情報をWikipediaの記事にしていくことで、シビックプライドを高めながら、地域の情報発信、情報リテラシーの向上、図書館司書のレファレンス利活用を活性化させる活動をしていました。この活動を知った静岡県賀茂振興局は、このWikipediaTownの活動を、地域の子供たちに情報リテラシー教育として取り組むことで、地域の歴史、シビックプライド、図書館の利活用に繋がると考え、下田市教育委員会、下田市立小学校、下田市立図書館と一緒に教育の実証モデルへと繋がりました。
2、WikipediaTownの進め方
①下田小学校に集合
下田小学校と白浜小学校の児童・保護者8組、元PTA会長、元校長先生、賀茂振興局、下田市教育委員会も集まり、WikipediaTownがスタートしました。
②WikipediaTownの説明
Wikipediaとは何か、WikipediaTownとは何か、手順、どんな効果があるのかを講師より説明しました。記事編集を通じて「元の文章をコピーしてはいけない、編集してまとめること」「誰でも確認可能なこと(検証できること)」「街のことが好きになること」「図書館で調べ物ができるようになること」ができるようになりましょう!と子供たちにも分かるよう、平仮名や絵を多用して資料は作成しました。
③各班に分かれて文化の確認
下田小学校の元校長先生と、白浜小学校の元PTA会長に、それぞれ自分の学校の歴史のお話を聞きました。下田小学校では創始者や人口の推移と校舎の移り変わりなどについて、白浜小学校では特徴的な取り組みをしているPTA活動についてなどをお伺いしました。親子で小学校の今と昔を学ぶ場となりました。
④学校内の探索
歴史の話の中で、各学校の特徴的な項目を洗い出し、「概要」「歴史・沿革」「特徴のあるところ」など記事作成部分を担当分けします。担当部分を中心に小学校を探検し、お話に聞いたものを探して回ったり、校長室に保管されていた尋常小学校時代の教科書を確認したりしました。同校の卒業生の親御さんは、懐かしい話に花が咲きつつ、子供たちも昔の小学校や旧字の使い方など見慣れないものに興味津々でした。
⑤図書館へ移動
図書館ではすでにリファレンスされており、下田小学校と白浜小学校の関連書籍が分類されていました。子供たちは、お話を聞いた内容の、該当書物が見つからない、知っているのに検証可能ではないので記載することができない、などのジレンマに挟まれながら書くべき文章を考えていました。
⑥パソコン教室で入力
調査後は、小学校に戻りパソコンで入力作業を行いました。図書館入力を担当したのは主に親御さんでしたが、親御さんが文章を考え、子供が入力をするというチームもありました。
⑦記事の確認
最結果発表として、自分が記事を担当した部分の説明と、苦労した点を話しました。
3、今後の取り組み
この活動は、下田市の小学校だけで広めるのではなく、賀茂郡の1市5町(下田市、南伊豆町、西伊豆町、東伊豆町、松崎町、河津町)の教育に取り込み、年に1度地域の発表会をすることで、互いの地域も知り、地域全体の情報発信にも繋げるよう検討を進めています。
4、所管
子供たちが、楽しそう参考文献を調べていたこと、記事作成を親子で話し合いながら進められたことが印象的でした。記事が世界中に公開されてしまうから慎重にやらないとと話していた子供もいます。参考文献がないと、記事としての信憑性が上がらないことや、伝承が文字で残っていないこと(プリントなどになっていて図書館にない)なども学べ、情報リテラシーの学習として効果的だったと感じています。市教育委員会、図書館、校長先生、賀茂振興局と地域の人たちが積極的に支援している姿も、この活動への期待がにじみ出ていたと思います。
(文責 市川博之)