授業と学校図書館

授業で役立つ活用事例を「先生のひとこと」として紹介します。

先生のひとこと

実技教科こそ学校図書館を活用できる!

2017-12-16 07:46 | by 村上 |

 今回は、東京学芸大学附属世田谷中学校家庭科教諭 桒原智美先生にインタビューしました。桒原先生は、本校の司書教諭でもあります。日頃から学校図書館を率先して活用し、公開研究会でも学校図書館やICTを活用した授業を行っています。

 そもそものきっかけは、図書委員会を一緒に担当して、生徒と一緒に本の購入に行った際、授業で作成している布のおもちゃに関する本も購入することが続き、資料がかなり潤沢になったので、家庭科室にある資料もあわせて、学校図書館でおもちゃのアイデアを考える授業をやってみたいと、先生から提案されたことです。


  この授業に関しては、データベースに事例No.A0062で見ることができます。

家庭科の授業を学校図書館でやることは、この時が初めてで、生徒もなぜ図書館なのだろうと、不思議そうにやってきたことを覚えています。

 2年後、文科省プロジェクトの一環で、学校図書館を活用した公開授業を引き受けることになり、それなら、このおもちゃ作りにつなげる授業を、ということで行ったのが、「私の成長・幼児の生活と遊び」です。こちらは、事例No.A0168で詳細を見ることができます。公開授業の様子は、2013年12月の、今月の学校図書館でも紹介しています。

村上:先生は、これまでも幼児に役立つおもちゃづくりや、子どもの発達や成長について効果的に学校図書館の資料を使って、アイデアや知識を得て作品に反映させるような取組をされてきましたが、その効果はどのあたりに感じていますか?

桒原:たくさんの資料を準備してもらうことで、生徒の興味・関心を引き出すことにつながったり、幼児の成長について調べることで、子どもにとってのおもちゃの意味を知ったうえで作品をつくるといったことにつながっています。以前に増して、生徒の作品に工夫や独自性が見られるようになったと思います。


村:毎年のように、東京都や全国レベルの賞を受賞しているというのもすごいですね。

桒:写真右は、2017年度創造ものづくり教育フェアin東京 1位作品です。(本校のHPでも紹介しています。) 確かに、先輩が、賞をとっていることが、励みになっているということもありますね。

村:おもちゃの製作の前に必ず先生は、大切なのは大作を作ることではなく、工夫した作品を作ることだと生徒に言っていますよね。

桒:たくさんのおもちゃづくりの本を用意していただいていますが、その本の通りに作るのでは意味はありません。たとえば、今年度都の大会で賞をもらった作品は、使えなくなってしまった髪飾りや、着られなくなった衣服の素材を上手に再利用していることが評価されています。

村:出来上がった作品を見ると、アイデアに独自性のあるものは、たとえ縫い目が不揃いでも目をひきますね。数年前からこんどは作った作品を、学習アプリのロイロノートをつかってプレゼンをするようになったのも、新たな展開だなと思いました。

桒:出来上がったおもちゃ作品の写真を撮り、どこに工夫をしたかを吹き込み、さらに動画で使い方を紹介してもらっています。作品に込められた意図や工夫を知ることができます。40秒という短い時間にどのように自分の作品を紹介するかというプレゼンテーションの力も求められます。

村:2016年に実施した本校の公開研究会では、3歳児を対象にしたおもちゃのプレゼン動画をみて、自分たちが親の立場、あるいは兄弟の立場、祖父母の立場になって、どのおもちゃを与えたいかを考えるという授業を、家庭科室ではなくて、図書館で行いました。家庭科の先生方だけでなく、司書教諭や学校司書も研究協議会に参加できたのは、私たち司書ににとってもよい経験でした。

桒:初めての試みでしたが、家庭科の教員も、違った視点で家庭科の研究授業に参加してくれる司書の皆さんの参加は、とても新鮮でした。ICTの活用も取り入れていたため、そこに関心を持って参加してくださった他教科の方もいましたね。

村:図書館もICTも、より豊かな授業を行うために効果的に使うものだということが、参加した皆さんに伝わったように思いました。

桒:ICTに関しては、アプリ「ロイロノート」は、作品の記録を残すという意味では、とてもいいソフトだと思っています。特におもちゃの場合は、色もカラフルで、形も楽しい物が多いので、次の学年に先輩の作品を見せるときも役立っています。また、今年は保育園児と遊ぶ様子もロイロノートで撮影してみました。

村:中学3年生が、保育園の子どもたちと本当に楽しそうに遊んでいましたね。子どもたちをつれてきてくれた保育士の先生が二人とも男の先生だったことに、私は時代の変化を感じました。

桒:昨年からすぐそばの保育園とつながりができたのは、とてもよかったことです。忙しい時期ではありますが、なんとか時間を確保してこれからも続けていきたいですね。

村:おもちゃづくりの授業が、このように多様な学びに広がっていくことに図書館が関わることができて、とてもよかったと思います。今は、生徒は家庭科の授業の一部を図書館で行うことを当然のことと受け止めてます。お弁当づくりや衛生、住居、防災など、家庭科の守備範囲は広く、だからこそ図書館の資料が役に立つ機会が多いと感じます。



桒:今は、どんなふうに図書館の資料を活用できるか、考えるのも楽しいし、司書教諭としては積極的に学校図書館を活用する良さを他の教員にも伝えるようにしています。

村:本校では、いろいろな教科で図書館を活用してもらえているのも、司書教諭からの働きかけがあるからだと思っています。ところで、学校図書館をまだあまり活用していない先生へのひとことをお願いしたいのですが…。

桒:家庭科は、授業時間が以前に比べて減っています。できるだけ実技の時間は確保したい。そんなところから、学校図書館と協働はスタートしました。少ない授業時間を有効に活用するためには、学校図書館のバックアップは不可欠です。様々な資料の中から、必要な情報を見つけて、それをもとに何かを作ったりする経験は、今後に活かせるはずです。

村:単に知識を得ただけに終わらず、それが作品や日々の生活に反映され、理解が深まるといえるかもしれません。

桒:そう考えると、「実技教科こそ、図書館を活用できる!」でしょうか。ご自分の学校に学校司書の方がいらっしゃるなら、まずはどんなことができるか話してみることをお薦めします。

村:まずは雑談からでもいいから、ぜひそうして欲しいですね。ありがとうございました。
(文責 東京学芸大学附属世田谷中学校司書 村上恭子)

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