読書・情報リテラシー

図書館の利活用を考える日

2018-11-19 12:15 | by 井谷(主担) |

 

 

 

図書館の利活用を考える日~全教員による図書館研修~

東京学芸大学附属小金井中学校 司書教諭 数井 千春

   学校司書 井谷 由紀

  東京学芸大学附属小金井中学校は、3学年12クラス、生徒数460名、常勤教員22名の学校です。毎年1回放課後の1時間を使って、全教員による図書館研修を行っており、実施開始から今年度でちょうど10年となりました。

 もともと教員の利用が少なく古い蔵書が多数残っていた図書館に、とにかく全教員に一度来てもらい廃棄本の決定だけでもしてもらいたいと司書教諭が教務に訴え、時間を確保したことから始まりました。その時初めて図書館に足を踏み入れた教員も多く、分類番号順に並んだ書架で蔵書を確認したり、あらかじめ司書が選んだ廃棄候補本の中から廃棄する本を選んだりしました。ただし、当時は「図書整理の日」という名称だったため、「図書係の仕事を手伝っている」という意識で参加している教員もかなりいました。

 

 そこで、【学習指導要領 解説 総則編 11.学校図書館の利活用】の中から「各教科等において学校図書館を計画的に活用した教育活動の展開に一層努めることが大切である。」という部分を示し、「図書館の利活用を考える日」と名称を変えて再スタートしました。その10年間の活動内容について、ご紹介します。

 

【毎年やっていること】教員用オリエン18報告会用.doc

・図書館の使いかたの確認・・・司書教諭や司書がプリントを使って説明。具体的にどの教科でどのように使われたかの報告や生徒の貸し出し状況なども報告 

・生徒のオリエンテーションの概要を説明

・教科ごとの年間利活用計画・・・教科ごとに座って、昨年度のものに加筆

・購入希望・・・随時受け付けているが、蔵書を見て思いついたらその場で書いてもらう。

・廃棄本決定・・・あらかじめ司書が①情報が古い本 ②2冊以上ある本 ③劣化している本 ④ その他、時代や流行が変って、生徒が手に取らなくなった小説など を抜いて並べて置き、その中から

①書架に戻す本、②教科の準備室に持っていく本  ③廃棄する本を選んでもらう。

 

 

 

 


 




【年度ごとのメインの活動】

・先生のための学校図書館活用データベースの紹介、参加計画、

より使いやすくするためのアンケートなど

・ワークショップ「つなげよう3冊の本」(詳細はDB事例 A0259参照) 

  生徒に行ったオリエンテーション第2弾を教員も体験

・附属校の連携や、他の附属校の活用の様子を紹介

・岩波ジュニア新書でポップづくり

  岩波新書を分類ごとに机に並べ、一人1冊にコメント。

・4~7月に行った学習に関わる本でポップつくり

 ひとり1冊作成し、コーナーに展示。図書通信でも紹介。












・1つの単元を選んで実際にコーナーづくり

 教科ごとに蔵書の中から選書。実際に教科に関連した本の有無を確認。
左から、【英語・イギリス】【数学・統計】【美術・現代アート】





今年度はメイン活動として、10年を振り返ってのアンケートに答えてもらいました。その結果、多かった意見は以下のとおりです。

  

 ①今までの活動の中で有意義だったこと(複数回答)

・廃棄本決定・購入希望 ・図書館の使いかた確認 ・附属校の連携や他の附属校の活用の様子

②利活用を考える日の実施でどんな利点があったか(複数回答)

・蔵書の確認 ・生徒に関連する本を紹介 ・コーナーを作ってもらえた 

③このような教員研修は公立でも可能と思うか の質問には、ほぼ全員が「思う」と答えました。コメントとしては、

*時間的に忙しく大変だと思うが、研修で得られる学びは教員にとってもいいものと考えられるため

*図書館に来ることでどう利用するか考えやすくなる。短時間でも来てみることが大切

*1年に1回30分程度でいいから確認の意味も含めやれると良いと思う。

*インターネットだけでなく精度の高い調べ学習をきちんと行えるようになることは重要 など。

1人だけ「思わない」と答えた教諭は、理由として、

*常駐の司書がいなければ難しい  とコメントしています。

④さらにどのような研修がふさわしいか

*教科連携した指導計画の作成

*電子書籍を学校教育で使うには

*著作権等の研修

*本学の図書館情報学などの先生による講義・ワークショップなど

*具体的な活用事例(他教科の)の共有ができるような研修

*図書館を使って授業をされる先生の授業を参観できれば、とても良いと思う

*生徒に【情報活用能力を指導する】という視点があれば、図書館活用だけでなくネットの利用も含めるのが必要。

*日常生活からどのように問いを立て自らそれを探究していけるか、自分で自分のちいさな研究をさせていくための探究型の授業のあり方について

*調べるときはネットで調べれば良いと思っている子どもたちが多い。自分の知らない世界との出会いをするには、図書館や書店で情報の海をさまよう必要があります。図書館、書店に出かける習慣をつけさせることが大事と思います。そのための教員の研修が必要。  等々



学校図書館ガイドライン
()学校図書館の利活用にもある通り、各教科等を横断的に捉え、情報活用能力を学校全体として計画的かつ体系的に指導するために、教員のための図書館研修を毎年継続的に行っていくことが大変有効と考えています。来年度以降も、内容を精査し実施していく予定です。



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