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情報活用能力を育てることを意識した理科・総合的な学習の時間の実践

2018-12-10 16:53 | by 金澤(主担) |

情報活用能力を育てることを意識した

理科・総合的な学習の時間の実践

東京学芸大学附属世田谷小学校 司書教諭 梅田  翼 

学校司書 金澤 磨樹子

 

 急速に情報化が進展する社会の中で、情報や情報手段を主体的に選択し活用していく力(情報活用能力)を育むことは、小学校においても重要な課題です。そこで、東京学芸大学附属世田谷小学校では、「育成を目指す情報活用能力の一覧表」を作成し、各学年の年間指導計画と関連付けて指導していくことを考えて実践を積み重ねていこうと考えています。

 

 ここで紹介させていただくのは、そのような状況の中で行った実践です。内容は、理科「身の回りの生物」の単元の学習と、そこから発展して行われた総合的な学習の時間での取組です。

●「身の回りの生物」単元の目標

 身の回りの生物について、探したり育てたりする中で、それらの様子や周辺の環境、成長の過程や体の作りに着目して、それらを比較しながら調べる活動を通して、次の事項を身につけることができるよう指導する。

ア 次のことを理解するとともに、観察、実験などに関する技能を身に付けること。

(ア)生物は、色、形、大きさなど、姿に違いがあること。また、周辺の環境と関わって生きていること。

(イ)昆虫の育ち方には一定の順序があること。また、成虫の体は頭、胸及び腹からできていること。

(ウ)植物の育ち方には一定の順序があること。また、その体は根、茎及び葉からできていること。

イ 身の回りの生き物の様子について追究する中で、採点や共通点を基に、身の回りの生物と環境との関わり、昆虫や植物の成長のきまりや体のつくりについての問題を見いだし、表現すること。





  情報活用能力に関わる目標

(1)情報活用の実践力

 課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて、必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し、受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力

(2)情報の科学的な理解

 情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解と、情報を適切に扱ったり、自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理解

(3)情報社会に参画する態度

 社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響を理解し、情報モラルの必要性や情報に対する責任について考え、望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度


 文部科学省の示す情報教育の目標は、上記の3つの観点に整理されている。

 これらの力は、教科にとらわれることなく、発揮されることが望まれる力である。そこで、本校では、それを次期学習指導要領に示された「育成すべき資質・能力の3つの柱」に合わせて整理し、「育成を目指す情報活用能力の一覧表」を作成した。


「育成を目指す情報活用能力の一覧表」.pdf

単元の流れとメディアルームの利用.pdf

子どもたちが作成した「世小の生き物MAP」.pdf


本単元では、生き物のスケッチを描かせることがよくある。生き物の体のつくりを把握するためにはとても良い活動であるが、次のようなデメリットもある。

 

  時間がかかる

   生き物を探すことからはじめ、スケッチを行うと、どうしても時間がかかる。1時間の授業の中で描くとすると1枚が限度であろう。

  同じ生き物ばかり描かれる

   「誰かと一緒にやりたい。」「虫は苦手だから誰かに捕まえてもらいたい。」「◯◯が見つからなかったから、みんなも描いている●●でいいか。」このような気持ちや状況は、スケッチを描かせている際によく見られる光景である。その結果として、同じ生き物が複数描かれ、描かれる生き物の多様性が失われていく。

  新たな発見が少ない

  スケッチを描くということは、描かれる生き物の多様性が失われることにつながる。また、インターネット場の情報と同じで、多種多様で大量の情報があるとき、子どもたちは手の届く範囲の情報で満足しがちである。結果、よく見れば見つけられるであろう、今までに気づかなかった生き物の存在を発見するには至らない。

 そこで本単元では、見つけた生き物の写真を撮影することで情報を集めることとした。また、集めた生き物の写真は、共同編集用アプリを用いて校内敷地図上の見つけた場所に貼り付け、クラスで共有した。

  これは、拡大印刷した校内敷地図に印刷した生き物の写真を貼り付けることでも実践可能な活動である。

 

 多様な生き物の情報が集まれば、詳しく知っている生き物もいれば、初めて目にする生き物もでてくる。その情報量の差が、子どもたちの「調べたい!!」につながっていく。そこで活用するのがメディアルーム(図書室)である。インターネットと異なり、信頼できる情報があり、限りある情報だからその一つ一つが大切にされる。また、学校司書と協力して国語辞典の使い方を指導したり、百科事典や図鑑の索引の引き方についても指導したりすることで、子どもたちの情報収集のための知識や技能を高めることをねらった。

 

  藤の実フェスタ(学習発表会)

 自分たちが学んできたことを人に伝えようとするとき、その情報の確かさについて捉え直す活動が必要になる。例えば、子どもたちの中にはダンゴムシについて調べたり追究したりしている児童がいた。はじめは、「ダンゴムシ」と呼んで飼育してみたり、どのような環境に住んでいるのか探していたが、メディアルームで借りた本を使って調べたり、インターネットを用いて調べる中で「オカダンゴムシ」と呼び名が変わった。

 これは、子どもたちが学習の中で「ダンゴムシ」と言っても様々な種類がいてそれぞれ違う種類の生き物である事に気づいたことによって起こった。同じようなことは「カマキリ」や「バッタ」についても言える。

 新たな知識を得ることで、子どもたちは生き物を捉える視点を新たに得ることができる。また、そこからさらなる疑問を見いだしていくことができる。子どもたちの求めに応じて指導者が適切な支援を行うことで、学びは連鎖的に起こっていく。

 

  まとめ

 繰り返しになるが、情報活用能力は、教科にとらわれることなく、発揮されることが望まれる力である。社会の情報化が急速に進む今だからこそ、一層重要になってくる。小学校段階においても、各教科のカリキュラムと結びつけ、計画的に指導を積み重ねていくことが重要であろう。

 理科の実践事例は、こちらをご覧ください。


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